手話で楽しむ能狂言鑑賞会inふくやま 公演レポート

公益社団法人 能楽協会

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2021年11月6日(土)に「手話で楽しむ能狂言鑑賞会inふくやま」が催されました。来場客は演者と一体となって、手話狂言と手話能を楽しんでいました。その様子についてお伝えします。

福山城址を背に福山市を望む

JR福山駅は山陽新幹線、山陽本線、福塩線が乗り入れるターミナル駅です。駅の北側には福山城があり、天守閣からは福山市をはじめ備後国だった地域を一望できます。

2022年の築城400周年に向けた改修工事「令和の大普請」が実施されており、2022年8月頃まで天守閣にのぼることはできません

大島能楽堂は福山城と反対の南側にあります。徒歩ではおよそ15分ほど、最寄りのバス停「商工中金」からは徒歩3分ほどになっています。

南側のロータリーから続く広々とした県道22号線をまっすぐ進む

和の建築美を感じられる喜多流大島能楽堂

赤みを帯びたタイル調の外観が特長の喜多流大島能楽堂は、昭和46年に建て替えられてから現在まで、中国・四国地方を中心とした能楽の普及や啓蒙の場として広く能楽ファンの方に愛されてきました。

能舞台は二階にありますが、一階には稽古場や喫茶室、フリースペースを併設するなど、公演以外でも能楽に触れられる環境が用意されています。

福山駅から10分ほど歩いた先、光南町2丁目交差点を左折するとすぐに大島能楽堂が見えます

喫茶室。当日分はこちらでチケット販売されていました。壁面には喜多流大島家の公演写真が展示されています

入口を入って正面の床の間。入口のすぐ右には蹲(つくばい)があるなど、和を大切にした内装になっています

チケット受付はビニールカーテンにて感染症対策が施されていました

能舞台は階段をのぼって二階にあります

座席では手話を使って会話をされている方も多くいました。チケットと共に渡されたパンフレットには土蜘蛛の現代語訳台本がついており、手話表現が難しい地謡部分は、台本を読むことで内容を理解できるよう配慮されていました。

公演前に土蜘蛛でシテを演じる大島輝久先生が舞台入り口に。「手話で楽しむ能狂言鑑賞会は、都内以外では初めてとなりますので、ぜひ皆さんに楽しんでいただければ」と意気込みを伝えていただきました

分かりやすい前解説

手話狂言・手話能の前に、喜多流シテ方の大島輝久先生、狂言方和泉流の三宅近成先生による解説が行なわれました。

手話狂言はすでに38年ほどの歴史があり、和泉流にある250曲ほどのうち約70曲を手話狂言で演じることができるそうです。その他にも日常の手話と狂言の手話の違い、曲目のストーリー紹介などがあり、解説によって手話狂言・手話能をしっかりと楽しむための前準備ができました。

公演前のアナウンスや解説では手話による通訳がありました

手話狂言「六地蔵」

比較的登場人物の多い六地蔵。能舞台上では日本ろう者劇団の俳優が手話で演じ、それに併せてプロの狂言師が声をあてるというスタイルでした。

手話という特性上、演者は基本的に会話の際には観客を向いて演じていましたが、違和感はありませんでした。日常の手話は、基本的に胸元近くでさらっとした動きになります。しかし、狂言の手話は身体を用いて大きくゆったりと表現されており、狂言の世界とリンクしていました。

手話だけではなく、大きな身振りによる表現と前解説で内容を理解していることも相まって、舞台への没入感を非常に感じることができ、観客の大きな笑いが何度も起こりました。

手話能「土蜘蛛」

手話能はプロの能楽師が手話で演じるスタイルでした。演者の手話は能楽師だからこその緩急のつけ方、止めや手先の綺麗さ、など仕草の美しさがあり、狂言とはまた違った魅力のある手話でした。

土蜘蛛の糸や源頼光や独武者の刀捌きなど、手話がなくとも場面をイメージしやすい演出がある曲目だからこそ、聞こえる人も聞こえない人も楽しめたのではないでしょうか。

おわりに

筆者は初めて手話による狂言と能を鑑賞しましたが、能楽の良さを残しつつも、新しい発見・楽しみがありました。「眠くなりそう」「話が理解できなさそう」と気おくれしてしまいそうな方にもおすすめします。

ろう者も含めた多くの方が、嬉しそう、楽しそうな表情で帰路に着いていました。昔ながらの伝統的な技法に加え、能楽界では様々な普及・啓蒙に向けた新しい試みが実施されています。ぜひ一度、能楽堂にお越しいただいたりYouTubeなど動画で鑑賞してみたりと、能楽に触れていただければと思います。

公益社団法人 能楽協会

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