【奈良公演】能楽のふるさと「奈良」と世界遺産「平城宮跡」の魅力

公益社団法人 能楽協会

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世界遺産を会場とする能楽特別公演。奈良では、いにしえの都・平城宮跡で8月18日(金)と20日(日)の2日間に開催されます。 公演の魅力をお伝えする本記事では「能楽のふるさと・奈良」「世界遺産・平城宮跡」についてご紹介します。

大和(奈良)がなぜ能楽発祥の地といわれているのか

大和猿楽四座が参勤し、猿楽を奉納していた多武峰談山神社(奈良県桜井市)

大和猿楽四座

能楽という芸能は、奈良時代に中国大陸から渡来した「散楽(さんがく)」を源流としています。散楽には、曲芸・奇術・人形劇など多種多様な芸能が含まれていましたが、平安時代に入ると滑稽な寸劇が人気を集めて猿楽(さるがく・さるごう)と呼ばれるようになりました。

南北朝期から室町初期には、歌や舞も取り込んで進化した猿楽が、劇団(座)となって活動します。なかでも人気を集めていたのは、大和国(奈良県)で活動していた大和猿楽四座でした。
大和猿楽四座は現在の多武峰談山(とうのみねたんざん)神社から奈良盆地に流れる寺川流域を発祥地とし、奈良の寺社に奉仕しながら芸の洗練に努め、能を大成した世阿弥を輩出しました。

大和猿楽四座は現在の能楽の各流儀にそれぞれ受け継がれ、各流儀の源となっていることから、奈良は能楽のふるさとと言われています。

大和猿楽四座

円満井座(えんまい) → 金春流
外山座(とび) → 宝生流
結崎座(ゆうざき) → 観世流
坂戸座(さかど) → 金剛流

奈良での能楽の足跡

奈良には、いたるところに能楽の足跡があります。

たとえば、吉野の金峯山寺蔵王堂では1594年(文禄3年)に能を愛した豊臣秀吉が参詣し、花見とともに能を催して、みずからも能を演じました。
しかし、しばらくは雨続きの天候で花見ができず、いらだつ秀吉のために僧たちが夜通し祈祷をしたところ、一転して快晴になり、盛大な花見が催されたというエピソードも残されています。

実は、この花見に参加していたのが徳川家康です。
家康はのちに征夷大将軍に任ぜられた際に将軍宣下祝賀能を盛大に催し、大和猿楽四座に演能させています。
以後、この慣習は歴代の徳川将軍に継承され、能は江戸幕府の式楽(しきがく/公的な儀式で演じられる芸能)として定着していきました。

今回の公演では、能楽とゆかりの深い地・奈良という場所で、能楽のルーツに想いを馳せながら演能をお楽しみいただけます。

世界遺産 平城宮跡はどんなところ?

本公演は平城宮の玄関口・朱雀門前で行われます

本公演の会場は、710年(和銅3年)に藤原京からあらたな国づくりを目指して遷都された平城京の宮跡です。当時の天皇の住居や政治・国家的儀式が行われた場として学術的にも貴重な価値があることから1998年(平成10年)に「古都奈良の文化財」として世界遺産に登録されました。
長期間にわたって調査や復原整備が進められており、広大な敷地に第一次大極殿、朱雀門などが復原されています。2018年には、ガイダンス施設やカフェなど5つの複合施設を含む「朱雀門ひろば」が完成し、「平城宮跡歴史公園」としてオープンしました。

今回の公演は、復原された朱雀門前に特設舞台を設けます。夏の夜にライトアップされ浮かび上がる朱雀門を借景として演能をお楽しみいただきます。

平城宮跡周辺には、奈良時代に活躍した光明皇后や称徳天皇にゆかりのある西大寺法華寺海龍王寺などの寺社も点在しています。公演前などに散策するのもおすすめです。

天平たなばた祭りと同時開催!

祭り期間中は天の川に見立てたロウソクの灯りで彩られる朱雀門ひろば(写真は昨年のものです)

会場の平城宮跡歴史公園 朱雀門ひろばでは、「天平たなばた祭り」が8月18日(金)・19日(土)・20日(日)16:00~21:00に開催されています。本公演とともにお楽しみいただけます。

現在、日本で行われている七夕(たなばた)は当時の平城宮で旧暦の7月7日(現在の8月ごろ)に行われていた祭を起源とし、遣唐使たちが中国から持ち帰った可能性が高い宮中行事のひとつ「乞巧奠(きこうでん)」に、日本古来の祭りや「織姫と彦星」の恋物語が組み合わされたものとされています。
このような背景から、平城宮跡では毎夏、夜の宮跡を光と灯りで演出する祭りが開催されています。

祭りのメインイベントは、18日(金)と20日(日)の本公演前に行われる天平七夕行列」です。七夕をテーマにした光の行列が夏の夜の平城宮跡を幻想的に彩ります。本公演をご鑑賞いただく観客の皆様は、朱雀門特設舞台前の座席エリアでゆったりとご観覧いただけます。
そのほか、毎年大人気の「夏の七夕夜市&天平かき氷祭り」や「天平ビアガーデン」など様々なイベントが予定されています。

なお、本公演の中日にあたる19日(土)は、スペシャルイベントとして、七夕の起源であり平城宮で実際に行われていた乞巧奠が再現されます。
当時、裁縫と楽器の上達を願い五色の布と糸を献上した宮中行事を、タレントの福本愛菜さん(元NMB48)が称徳天皇を演じて行われます。日程に余裕のある方は、乞巧奠の再現イベントもあわせてお楽しみください。

関連記事では、平城宮跡 能楽特別公演の公演内容(特別ゲストを招いて行われるトークイベント・奈良にゆかりのある上演演目)についてご紹介しています。

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