世界遺産を会場とする能楽特別公演。奈良では、いにしえの都・平城宮跡で8月18日(金)と20日(日)の2日間に開催されます。 公演の魅力をお伝えする本記事では、両日特別ゲストを招いて行われるトークイベントと、奈良にちなんだ上演演目についてご紹介します。
1日目は野村萬斎さん 2日目は北翔海莉さんを迎えてトークイベントを開催
本公演では、能を上演する前に特別ゲストによるトークイベントが予定されています。
1日目 18日(金)のゲストは能楽師・狂言方和泉流 野村萬斎さんです。現代劇や映画・TVドラマの主演・演出など幅広く活躍される萬斎さんから、当日はどんなお話しが飛び出すのか楽しみです。
2日目 20日(日)のゲストは、元宝塚歌劇団星組男役トップスターで、現在は女優・歌手として活躍されている北翔海莉(ほくしょう かいり)さんです。
現代能「マリー・アントワネット」で能楽師とともに舞台に立った経験をお持ちの北翔さん。はたして能楽にはどのような印象や想いを抱いていらっしゃるのか……ご期待ください。
1日目の能「土蜘蛛」は蜘蛛の糸を駆使する立ち回りなど見どころ満載
18日(金)に上演されるのは、能 金剛流 「土蜘蛛」です。 都をおびやかす妖怪・土蜘蛛の精を退治する鬼退治物で、能楽初心者にもわかりやすい内容です。
見どころは蜘蛛の糸を駆使する立ち回り。後半の主役である土蜘蛛の精が正体を現し、源頼光の家来たちに蜘蛛の糸を投げる躍動感あふれる舞台は必見です。
今回は夜の舞台ということから、白い蜘蛛の糸が宙で放物線を描く様が照明に照らされて浮かび上がる、美しい光景がご覧いただけるでしょう。
この物語の後半の舞台、土蜘蛛の精が逃げ帰る先は、奈良の葛城山です。
「土蜘蛛」に葛城山が登場するのは、土蜘蛛と称する先住民を神武天皇が征伐し、その村を葛城と変えたとされる伝承に関連があると言われています。
2日目の復曲能「大般若」は「西遊記」を題材としたスペクタクル溢れる曲
20日(日)に上演される曲は「西遊記」を題材とした復曲能 観世流「大般若(だいはんにゃ)」です。
この演目は、長らく上演されず廃曲となっていたものを、シテ方観世流で人間国宝の梅若実桜雪 氏が1983年(昭和58年)に劇作家の堂本正樹氏とともに復曲させました。
物語の主役は、大般若の経典を求めシルクロードの旅に出た玄奘三蔵の行手を阻む深沙(しんじゃ)大王。
深沙大王は、七度命を失っても生まれ変わり、ひたすらに天竺を目指す三蔵の心意気に打たれて大般若経を与え、三蔵の帰りを助けます。
見どころは、深沙大王と三蔵のほかに飛天や龍神が現れ舞楽や躍動的な所作を見せるシーン。スペクタクルに溢れている曲なので、能が初めての方にも十分にお楽しみいただけることでしょう。
また、深沙大王の能面と装束も必見!
復曲のきっかけとなった梅若家に伝わる名物面「真蛇」をかけ、頭上に大龍の冠を載せています。そして胸元には、七度命を失った三蔵を表す七つのドクロが下げられています。
「大般若」もまた奈良にゆかりのある曲。物語に登場する大般若経が伝来した寺が奈良の薬師寺で、現在、薬師寺には玄奘三蔵のご頂骨(頭部の遺骨)が納められた玄奘三蔵院伽藍も建てられています。
能楽のふるさと「奈良」にある世界遺産「平城宮跡」で、当地にちなんだ古代ロマンあふれる演目をご覧いただけるのは大変貴重な機会です。夏の夜、特別なひとときをお過ごしください。
関連記事では、本公演の開催地と会場である「能楽のふるさと・奈良」「世界遺産・平城宮跡」についてご紹介しています。