金春円満井会横浜公演 公演レポート

公益社団法人 能楽協会

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日本全国能楽キャラバン!は7月から1月にかけて全71公演が行われ、無事に終了しました。1月最後の週末も全国各地で公演が行われました。その中の一つ、神奈川県 横浜能楽堂で開催された金春円満井会横浜公演の公演レポートをお届けします。

横浜能楽堂までの道のり

横浜能楽堂はJR・横浜市営地下鉄の桜木町駅から徒歩10分ほどの場所にあります。どちらの路線から行く場合も、野毛の町方面に直結する地下通路「野毛ちかみち」を通ります。
野毛ちかみちを歩く途中にも横浜能楽堂の掲示スポットがあったり、出口案内がしっかり書かれていたりしますので迷うことはありません。また、出口の近くは飲食街もかなり多く、さらに野毛山動物園へ行ける通りもあるなど散策にはうってつけとなっています。

地下通路「野毛ちかみち」。能楽堂のお知らせを掲示しています

出口は南1です。飲食スポットが多いので公演前後の喫茶や食事処には困りません

ただ、気をつけたいポイントがあります。それは「坂」です。

かなり急な坂が多く、横浜能楽堂自体が紅葉坂を登った先の「紅葉が丘」という場所にあります。公演直前に駆け込むことに……はならないよう、時間にはじゅうぶんな余裕をもたせて向かいましょう。タクシーを使われても良いかと思います。私が能楽堂に着いたときにも、多くのタクシーが到着するところでした。

また、横浜能楽堂は日本庭園などがある掃部山公園(かもんやまこうえん)に隣接されていますので、少し自然を堪能してから入場するのもおすすめです。

紅葉坂の入口になる紅葉橋には、立派な紅葉マークが

紅葉坂のところどころに道標石や標識がありました

横浜能楽堂前。裏手すぐの所に掃部山公園があります

掃部山公園。横浜開港に貢献した井伊直弼の記念碑がありました

感染対策とパンフレット

能楽堂に入る前に係員から消毒液を手にかけてもらい、さらに入口手前でカメラ検温をして入場になります。本公演は、全席完売ということもあり二重の感染対策が施されていました。

能楽公演はパンフレットも楽しみの一つです。公演前に一読することで曲目の理解が一気に深まります。また、当日出演された能楽師や横浜能楽堂の公演チラシも入っていました。横浜能楽堂は施設見学会も精力的に行っておりチラシを通じて情報を得られたのは新しい発見でした。

万全な感染対策にご協力いただきました

入場後、ご自身でパンフレットを一部とっていただきました

能楽堂内の施設も充実!

能楽堂は全国的に大切に使われており、リラックスできるスペースが確保されていますが、中でも横浜能楽堂はかなりゆとりのある能楽堂と感じました。

まず1階は十分な休憩スペース、そして入口入ってすぐのところにテーブル席と自動販売機があります。能楽公演は休憩が15〜30分ほどとられることが多いので、こちらでゆっくり休憩ができます。他にもベンチが配置されています。

階段を上がると、二階席および、入口吹き抜けの箇所に展示室があり、撮影禁止ではありましたが能・狂言の展示物がありました。また、展示室側にテーブルがある休憩室、反対側にトイレがありました。公演では、休憩時にトイレが混雑することがありますので、少し離れたトイレを利用してみてはいかがでしょうか。

また、横浜能楽堂の客席(見所)は、全国でも珍しく、二階席があります。そのため天井が高く開放的な作りとなっており、一度、二階席より鑑賞するのも新鮮な発見がありそうです。横浜能楽堂 能舞台の詳しい解説はこちらのページでご紹介しています

二階席からの能舞台。全体が見渡せてマニアックな視点で鑑賞できます

ロビーの吹き抜けエリア。2階部分は展示室です

1階の展示エリア。歴代の伝統芸能の写真が掲載されています

2階展示室エリア

公演レポート

狂言 御田

御田は、能「賀茂(加茂)」の替間(かえあい)として、通常の間狂言とは異なる特別な演出で演じられます。今回は独立した狂言として演じられました。関寺小町に合う選曲をと、シテの山本東次郎先生が考えられたそうです。

狂言の中でも大曲となるこの曲は、春が来て活き活きと田植えをする早乙女と、それを見守る神職との楽しいやりとりです。山本東次郎先生は活力があり、それでいて尊さが伺える見事な演技。そしてそれぞれ色の違う装束を着た早乙女の七人がずらりと並ぶ様子は圧巻でした!

神職と早乙女の台詞の掛け合いが大変おもしろく、特に「あの山は綺麗で、天気・春の桜は素晴らしい」など季節感あふれる台詞に本当に臨場感がありました、観客は思わず山の方を確認したり、早乙女の田植えは本当に種を巻いているかのような仕草も床をのぞいていました。台詞をよく聞くとユーモアあふれる内容で、清々しい終わり方でした。

能 関寺小町 古式

関寺小町は能の中でも「三老女」といわれる秘曲の一つです。「伯母捨」「桧垣」(金春流表記)と並ぶ三老女の中でも、最も格の高い曲と言われています。

七夕の日に、稚児を伴う僧と言葉を交わす老女。和歌について語るうちに、百歳となった小野小町と名乗り、やがて子供に手を引かれ昔を思い出すように舞を披露します。シテ 本田光洋先生の老女の所作と舞の演技力は静寂、透明感のある老寂の世界でした。対比としての稚児の舞いが初々しかったのと、ワキの演技力も大変試される、まさに大曲であったと思えます。当日配布されたパンフレットにも本田光洋先生のインタビューと関寺小町の詞章が掲載されていたので、曲目を理解した上で鑑賞できました。

終演後の散歩

予定時刻を少し超えての終演。出演者の熱意を持って上演時間を延長してくれたのだと感じました。横浜能楽堂を出ると富士山のシルエットが綺麗に見えました。人はだれしも老いるものです。来場いただいた皆様はどのような感想を抱いたのでしょうか? 談笑しながら、あるいは考え込みながら各々が紅葉坂を下って帰られていました。

ふと、紅葉橋を曲がらずに歩くと……? みなとみらいエリアに行けるのですね。ほんの15分ですっかり日も暮れた2022年の横浜の夜景を堪能しました。

夜景

公演の感想をどこかに記録してみませんか?

能楽は他の演劇と比べると、公演への感想があまりネット上に掲載されていません。そのため、能楽ってよくわからないから行くのが怖い、などという声があるのも事実です。今回、能楽キャラバン!通信を通じて12公演ほどのレポートを掲載しています。公演は本当に一期一会。素晴らしい偶然・出会ってしまった感動を思い返せるように、当日の写真やSNS、あるいは日記などに記録してみてはいかがでしょうか。

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