大阪の能楽堂紹介

公益社団法人 能楽協会

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大阪には著名な能楽堂が数多くあり、プロの能楽師による公演が定期的に催されています。今回は大阪に焦点をあて、各能楽堂の魅力に迫ります。

大阪の能楽を永く支えてきた「大槻能楽堂」

大槻能楽堂

大槻能楽堂は1935年(昭和10年)、大槻十三氏により、全国初の椅子席の能楽堂として創建されたのがはじまりです。第二次世界大戦において国内の有数な能楽堂が焼失する中、戦禍を逃れて終戦当時、大阪市内で唯一残った能楽堂として、地域の能楽文化の普及や啓蒙、後継育成に寄与してきました。

1935年(昭和58年)、建物の老朽化と耐震・防火対策として、木造から鉄筋コンクリートに改築されました。能舞台は当初の状態に組み直されており、大阪で唯一の三間四方の広さとなっています。また音響や照明など設備にもさまざまな工夫を凝らしており、その造りや関西一円の演能の中心的な役割を果たしていることから、能舞台が登録有形文化財(建造物)に登録されました。

現在、定席は502席と大規模な公演も開催できるということで、自主公演も含め多くの公演が催されています。多目的トイレや車椅子席対応などのバリアフリー設備も整っています。

大阪城や難波宮跡などの史跡も近く、公演とともに歴史を感じてみてはいかがでしょうか。

伝統的でありながら新しい魅力にあふれる「山本能楽堂」

山本能楽堂

山本能楽堂は1927年(昭和2年)、先代・山本博之氏によって創建された木造三階建ての能楽堂です。第二次世界大戦の戦災で一度焼失しましたが、「もう一度谷町に能楽堂をつくりたい」という船場の旦那衆をはじめ市民の熱意により1950年(昭和25年)に再建され、谷町の能楽堂として愛されてきました。

客席(見所)は1・2階とも桟敷席(一部椅子席)の今では全国的に少なくなった伝統的な舞台ですが、照明がカラーLEDで1,670万段階の色彩を演出することができたり全館が床暖房であったりなど、最新の技術が取り入れられて歴史の陰翳が刻まれた建物にモダンな空間が対峙する独特の空間となっています。2006年、文化審議会により国登録有形文化財となりました。

現在は「初心者も楽しい体験型の能楽堂」をキャッチフレーズとし、開かれた能楽堂として多様な方々が利用しています。また、能をはじめとする、文楽、落語、講談などの上方伝統芸能の情報発信基地としての役割も担っています。

その他 能楽堂

西宮能楽堂

西宮能楽堂

大阪府ではありませんが、能楽師が公演でよく利用するのが兵庫県西宮市鳴尾にある「西宮能楽堂」です。2017年、観世流シテ方の梅若基徳氏が代表理事を務める(一財)日本伝統芸術文化財団により開設されました。

舞台が間近で、能楽師の息遣いや装束の衣攣れの音までも聞こえ、迫力ある舞台で鑑賞できます。鏡板には老松に梅の蕾が添えられ「舞台に立つ演者と観客の心により蕾を咲かせてほしい」という願いが込められています。檜香る真新しい能楽堂で、能楽の世界にどっぷりと入り込んで舞台を鑑賞してみたいという方におすすめです。

堺能楽会館

堺能楽会館

堺駅から10分ほどの場所、大きな府道沿いにある堺能楽会館は、全国でも貴重な個人所有の能楽堂です。江戸から明治・大正・昭和にかけて酒造業や湊焼で発展した大澤家が、50数年前にビルの建設と一緒に中庭に能舞台を建てられました。

中に入るととても静かで、席数が150ほどで少しレトロな雰囲気で鑑賞できます。また、市民講座や能楽教室も開催していたり、「日本の伝統文化を未来に伝えたい」「若い形や市民に親しんでもらいたい」という思いから、学校(学生)や市民向けのイベントが開催されています。

おわりに

今回は大阪の能楽堂を紹介しました。能楽公演が定期的にある他、他のご予定と一緒に公演を鑑賞される方も多いようです。お近くにお住まいの方、大阪に足を運ぶ機会がある方は、ぜひ大阪の能楽堂にて能楽をお楽しみください。

公益社団法人 能楽協会

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