名曲を楽しむ~「復曲」初心者入門

公益社団法人 能楽協会

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能楽公演のパンフレットやポスター、Webサイトに記載の曲目に「復曲」や「復曲能」と書かれているのを見たことはないでしょうか。復曲とは、過去に廃曲となった曲を、現代の能楽師や研究者・学者らが復元したものです。

日本全国 能楽キャラバン!では、大阪府大阪市にある大槻能楽堂にて「大槻文藏三番能 復曲の名曲を観る!」と題し3回にわたって復曲能「維盛」「碁」「菅丞相」が演じられました。
本記事ではシテ方 観世流 大槻文蔵先生に復曲についてお伺いした内容をまとめています。

能楽の曲目について

室町時代から続く能楽で、今日の形を創りだしたのは観阿弥・世阿弥親子であることはご存じかと思います。

世阿弥は伝書の中で「能を書くこと この道の命なり」と記しており、新しい能の作品を書くことを重んじていたことが伺えます。また、世阿弥以降にも特長のある作品がつくられ、様々な能の作品があります。これらは650年以上経った今でも愛される日本伝統芸能として受け継がれ、上演されています。

能楽の前身は猿楽と呼ばれるものですが、その当時から含めても、能楽の作品数はなんと約2,000曲以上にもなります。その中の250曲ほどが現代でも上演されており、皆さんが「能楽を観たい」と思った時に見ることができます。

反面、残りの作品は現在では上演されていません。上演されなくなった理由は定かでなく、また作者や成立年代も含めて不明なものがほとんどになります。

復曲について

上述した現在上演されていない作品を現代に復活させた作品が「復曲」となります。

復曲にあたり、まずどの曲を復曲するかの検討からはじまります。数多ある曲から「現代に通じるテーマを持っているか」という視点で探っていきます。

その上で選んだ曲について深く掘り下げをしていくのですが、復曲を進めるにあたり、作者の声や作品の声を聞きながら能楽師をはじめ研究者や学者の力を結集し、様々な角度から検討・検証して作業は進められます。これまでに刊行された台本を検討すると、扱っているテーマや作風から感じられるものが多く、それらを大切にして復曲しています。

復曲するにあたり、多くの手間や労力・時間が必要となりますが、埋もれている名曲を掘り起こして舞台で演じ、観客との一体感があるものに仕上がった時には、何にも代えがたい喜びを覚えます。

大槻文藏先生が取り組まれた復曲

大槻文蔵先生は復曲に意欲的に取り組まれています。直近20年で復曲した主な曲目をご紹介します。

・碁
・菅丞相
・猩々(同音地謡による)
・融(同音地謡による)
・花筐
・巴園
・自然居士
・経盛
・墨染桜
・養老

おわりに

復曲は他の曲とは違った感じ方・鑑賞体験が魅力の一つです。復曲の公演がある際にはぜひ能楽堂に足をお運びください。日本全国 能楽キャラバン!では復曲や新作能など各地で様々な公演を行っています。是非、お近くで催される公演にお越しください。

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