2025年9月から12月にかけて全国各地で【楽しむ能「楽」プロジェクト!】が展開中です。「奈良 能楽公演」は、12月21日(日)、奈良公園内の奈良春日野国際フォーラム 甍~I・RA・KA~にて開催されます。
能楽発祥の地・大和奈良の舞台にふさわしく、悠久の歴史に息づく能楽の美の世界を多彩なプログラムでお届けします。
古の物語に想いを馳せながら、舞・謡・囃子が織りなす能楽の奥深さを存分にお楽しみいただける一日となります。
談山神社に続く、ふるさと奈良での能楽公演

本年10月に「談山神社 能楽特別公演」が開催された多武峰談山神社
約700年続く能楽の歴史は、南北朝時代にこの地で花開いた「大和猿楽」に遡ります。 中でも人気を誇っていた「大和猿楽四座」は、円満井座が金春流に、外山座が宝生流に、結崎座が観世流に、坂戸座が金剛流と後に喜多流へと受け継がれ、今日のシテ方五流の礎となりました。
大和猿楽四座は、奈良の寺社に参勤し、神事や祭礼に芸を奉納しました。多武峰談山神社もその寺社の一つで、観阿弥・世阿弥親子も参勤しました。 本年10月、この能の「原点」の地において、「談山神社 能楽特別公演」が催され、シテ方観世流の人間国宝・大槻文藏氏による世阿弥作の名曲「井筒」が演じられて好評を得ました。
このたびの「奈良 能楽公演」は、その流れを受け継ぎ、能楽のふるさとならではの企画と演目をもって新たな舞台をひらきます。
春日の杜に息づく芸能の心― 花山院弘匡宮司 × 大倉源次郎氏 対談 ―

現在も「春日若宮おん祭」で原初の猿楽が催されている春日大社
会場の奈良春日野国際フォーラム 甍~I・RA・KA~は、古都・奈良の魅力が凝縮された奈良公園内に位置しています。その周辺には、大和猿楽ゆかりの寺社が今もなお存在しています。
なかでも春日大社は、「春日若宮おん祭」において原初の猿楽が演じられている、能楽にとって特別な場所。本公演では、その春日大社の宮司である花山院弘匡(かさんのいん ひろただ)氏をお迎えし、人間国宝・大倉源次郎氏(小鼓方大倉流十六世宗家)との対談「奈良に息づく能楽の心」をお届けします。
千年の祈りと芸能が交差する春日の杜。能楽師、宮司、二つの視点から奈良と能楽のかかわりを深く掘り下げます。貴重な対談は、舞台の幕開けにふさわしいひとときとなることでしょう。
奈良ゆかりの曲も交え、豊かな演目が織りなす能楽の世界

能「望月」。後場のシテによる獅子舞
はじまりの曲は、春日大社も登場する祝いの舞囃子「佐保山(さおやま)」。佐保山の姫が現われ、神楽を奏すという吉祥の曲が、舞台を華やかに彩ります。
続いては、謡を命じられた太郎冠者と主人のやりとりに笑いがこぼれる狂言「寝音曲(ねおんぎょく)」。軽妙なやりとりの中に笑いが生まれる、親しみやすい一曲です。
さらに、謡と打楽器のみで演奏する一調「上宮太子(じょうぐうたいし)」も上演。 上宮太子とは聖徳太子のことで、この曲は、いまでは謡のみが伝わる貴重な演目です。シテ方金春流81世宗家・金春憲和氏の謡と、大倉源次郎氏の小鼓との一対一の真剣勝負が、短い時間でありながらも深い余韻を感じさせます。
そして公演の最後を飾るのは、仇討ちを描いた能「望月(もちづき)」。 仇討ちまでの劇的な場面展開と、謡や舞の芸尽くしが盛り込まれた大曲です。後半では、シテ(主役)が獅子舞を舞い、仇敵・望月に酒を勧めて油断させる場面が見どころ。 能では「石橋」「望月」「内外詣」の三曲にしか登場しない貴重な獅子舞は、激しい動きのなかに望月の様子をうかがう繊細な所作が入り、緊迫感に包まれた舞台を創り出します。
能楽発祥の地・奈良で、その奥深き能楽の世界を、ぜひご堪能ください。
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