宝生流 東京公演 獅子三題 公演レポート

公益社団法人 能楽協会

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2021年10月31日(日)に宝生能楽堂にて「宝生流 東京公演 獅子三題」公演が催されました。生憎の雨で足元が悪い中でしたが、能楽堂内はなんのその、来場客の期待感と程よい緊張感で凛とした佇まいを見せており、取材した筆者も襟元を正す思いで会場内を見てまわりました。
今回は「獅子三題」公演についてその様子をお届けします。

JR水道橋駅を出てすぐ!好立地に位置する宝生能楽堂

JR水道橋駅東口からわずか3分という好立地ですが、神田川と外堀通りを渡るため、バラエティに富んだ「東京の景色」を堪能しながら向かいます。

宝生能楽堂は、JRまたは都営三田線の水道橋駅が最寄り駅となります。JRは東口改札が近く、西口改札から出てしまうと大回りが必要になりますのでご注意ください。※都営三田線の場合はA1出口が最寄りです

水道橋駅東口を左に向かって歩き、神田川を渡ります

外堀通りの交差点に差しかかると東京ドームホテルやミーツポートが目の前に。東京ドームシティのスカイフラワーも見えます

交差点を渡り、NEW YORKER'S Cafeの角に入ります。能楽堂の表示板があります

軽い坂をのぼるとすぐそこに宝生能楽堂はあります。看板のある白い柱の間を進むと宝生能楽堂入り口です

公演前の宝生能楽堂の様子

開場して間もなく能楽堂に入場しましたが、開演1時間前にも関わらず多くの来場客が入場されており、今日という日をとても楽しみにされていたのが見てとれます。

受付にはビニールカーテンがひかれていました

検温や消毒をしっかりと行った上で、スタッフが受付をしていました。ロビーなどいたるところに消毒液が設置されており、感染対策に万全を期している様子がうかがえます。

開演を前にロビーでくつろぐ来場者

都内有数の広さを持つ能楽堂のロビー。右手には高さのある窓の向こうに、丁寧に手入れされた中庭を望めます。また、一部の窓が開放されており、しっかりと換気もされていました。

ロビーの一角にある掲示板。「夜能」に出演された声優・俳優や能楽師、脚本家のサインが飾ってありました

ロビーには宝生能楽堂の歴史を感じられる展示物や装束・能面の展示スペースもあり、数か月に一度、展示物が変更されるそうです。展示スペースをはじめ、ロビーを眺めているだけでも夢中になり、時を忘れてしまいそうになります。

売店のショーケース

ロビーの奥には売店もあり、謡本などの書籍や足袋、扇入などのお稽古で使う道具などが販売されていました。能のお稽古をしている方は公演を楽しむとともに、自身のお稽古道具を購入することもできます。

公演の様子

能「望月」

最初は能「望月」でした。演者の迫力もさることながら、特に筆者が魅入られてしまったのは音。「宝生能楽堂は音が良い」とよく言われますが、それを肌で感じることができました。能楽はマイクなど音響設備を使いませんので、演者の声はすべて肉声となるのですが、音の響きやボリュームが大変素晴らしく、しっかりと心地の良い形で耳に入ってくる体験ができたことは、本記事を執筆している今でも感動を覚えるほどです。

狂言「獅子聟」

15分の休憩をはさんで狂言「獅子聟」です。心地よい演者のやり取りに、思わず笑い声が漏れてしまう観客が多くいました。

今回の曲は山本東次郎家にしか上演を許されていない秘曲で、来場者にインタビューをした際「この狂言を見るために来た」という声が聞かれたのが印象的でした。

能「石橋 赤黒」

再度の15分休憩をはさみ、最後は能「石橋 赤黒」です。今回の石橋は「赤黒(しゃっこく)」という小書(こがき)=特殊演出にて上映されました。小書が新しく作られるのは、宝生流では約173年ぶりとのことだそうです。

後場になり、赤と黒の対照的な獅子が躍動感ありながらも息の合った動作で舞台や橋掛りを舞う姿に、食い入るように見入ってしまいました。「望月」でも感じた音の魅力が「石橋」においても存分に発揮されており、獅子の力強さを全身で感じることができました。

公演を終えて

一日でここまで獅子三昧ができるのは、おそらくなかなか無いのではないかと思います。公演後の余韻もとても心地よく、また能を見たいと思える一日でした。今回の公演にあたっての出演者インタビューはステージナタリーでも掲載されております。あわせてご覧ください。

同じ曲でも公演や演者によって味わいが変わるのも能楽の魅力。「一期一会」は茶人の言葉ですが、今回の公演についても、まったく同じものは見られないという一抹の寂しさとたった一度の公演を鑑賞できた喜びは、かけがえのないものであると感じています。ぜひその体験を、皆さんも能楽堂で体験してみてはいかがでしょうか。

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