観世能楽堂特別公演〜「正尊」シテ方観世流 武田宗和先生インタビュー

公益社団法人 能楽協会

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2022年1月10日(月)に東京・銀座の二十五世観世左近記念 観世能楽堂で、日本全国能楽キャラバン!公演として「観世能楽堂特別公演」が開催されます。

本公演は、観世会正会員総出演により、大曲「安宅」と「正尊(しょうぞん)」の二演目のほか、連吟、独吟、仕舞の六演目も上演。さらに、狂言「富士松」を野村萬斎先生が演じるという、なかなか見ることができない豪華番組です!

今回、能「正尊」でシテを勤められるシテ方観世流の武田宗和先生に、本公演の魅力や「正尊」の見どころ、会場の二十五世観世左近記念 観世能楽堂についてお伺いしました。

武田宗和(シテ方観世流)

1948年、東京生まれ。父の武田太加志と二十五世観世左近に師事し、1952年、能「鞍馬天狗」花見にて初舞台。 重要無形文化財保持者(総合認定)。令和元年、旭日双光章受章。公益社団法人能楽協会常務理事、一般社団法人観世会常務理事。「初陽会」主宰。

大曲「安宅」と「正尊」の組み合わせは若手能楽師の発案で実現

武田先生:本公演は、観世会正会員総出演をコンセプトとして、舞台に登場する人物が多く、迫力のある大曲「安宅」と「正尊」をお届けします。

この二演目は、若い世代の能楽師が能ははじめてという方も楽しめるように聴きどころ、見せ場のはっきりした劇的な構成の曲を選び、今回「安宅」のシテを勤める二十六世観世宗家観世清和の了承を得て実現しました。

どちらも義経物で直面(ひためん)物(面を付けない曲)。そして「安宅」にある勧進帳、「正尊」の起請文、「木曽」の願書という三大読み物(シテが文書に節をつけ、拍子にのせて読み上げる見せ場があり、非常に難しいとされる演目)のうちの二演目という、ふだんの公演では絶対にあり得ない組み合わせで、まさに特別公演だからこそ実現した貴重な機会と言えます。

この二曲の前後には、連吟、独吟、仕舞、そして野村萬斎さんによる狂言と、能楽のバリエーションがたくさん詰まった舞台となっていますので、能楽には様々な要素・形式があることを知っていただき、楽しんでいただけたらと思っています。

 

毎朝のスクワットで23年ぶり、2度目の「正尊」シテに挑む

能「正尊」 武田宗和 1998年(平成10年)の観世会春の別会

武田先生:「正尊」のシテを勤めさせていただくのは、1998年(平成10年)の観世会春の別会以来、23年ぶり、2度目となります。

「正尊」は、土佐坊正尊が源義経に討ち取られた史実をもとにして作られた現在能(シテが実在する人物として登場する能)で、後場は長刀を持って激しく舞う場面もあるので、まさかこの歳になって、もう一度勤めさせていただくことになるとは思いませんでした(笑)。現在能は立居(立ったり座ったり)も多いので、毎朝30回のスクワットに励み、備えているところです(笑)。

曲の見どころは、前場では、刺客ではないかと問い詰める義経に対し、正尊が熊野参詣のために通りがかったとすっとぼけるやりとり、そして正尊が身の潔白を証明するために咄嗟に作り上げた起請文を読み上げる場面です。ここで物語の緊張感が一気に高まります。

そして、後場のクライマックス、正尊方と義経方による変化に富んだ斬り合い場面。今回は翔入(かけりいり)の小書(特別演出)で多くの斬り組みを見せる演出を用意していますので、ご期待ください。

今回、能ははじめてという方には、本公演を通して、能の魅力を一つでも発見していただけたらうれしいですね。事前にあらすじを頭に入れて来ていただければ、謡の内容を理解できなくても、あの場面だなとご理解いただけますし、装束の美しさ、シテの足の運び、あるいは囃子の音色や掛け声など、能のどこか一つに興味を持っていただけたらと願います。

また、ご常連の能楽ファンの方には、これはお弟子さんたちにもよく言うことですが、公演中は謡本を広げないでいただきたい(笑)。その分、舞台に注力していただいて、何かを感じつかみ取っていただけたらと思います。

観世ゆかりの地・銀座の檜舞台から伝統文化の神髄を世界へ

2017年にオープンした銀座の大型複合施設GINZA SIXの地下3階にある二十五世観世左近記念 観世能楽堂

武田先生:本公演は、2017年にオープンした銀座の大型複合施設GINZA SIXの地下3階にある二十五世観世左近記念 観世能楽堂で行います。観世能楽堂は観世流の活動拠点で、以前は渋谷区松濤にありましたが、そのときの総檜造りの舞台部分をそのまま銀座に移築して新しく生まれ変わりました。

能舞台の四隅にある柱のうち、正面観客席から見て左前の目付(めつけ)柱を取り外すことが可能となっておりまして、能楽の公演だけではなく、邦楽・洋楽のコンサートや演劇、落語など様々な分野の催しを開催できる多目的ホールとしてもご活用いただいています。

オープン当初、宗家は「銀座だからね、ちゃんとした格好で楽屋入りをするように」などとおっしゃられていましてね(笑)。宗家も銀座に来られたことがうれしかったんでしょう。

それというのも、江戸時代、観世大夫(宗家)は幕府から銀座に屋敷を拝領し、二十二世大夫が維新にともない拝領地を返上するまで、約500坪の敷地に舞台、住まい、蔵を構えていたからです。かつて観世新道と呼ばれていたのが、現在の銀座一丁目付近にあたります。銀座は観世ゆかりの地なんです。

そういったご縁から、観世会は、能楽、歌舞伎、演劇、ミュージカル、宝塚などの劇場に、クラシックホール、ギャラリー、映画館などがひしめき、エンタテインメントが溢れている銀座エリアを世界有数の観光拠点に育てようという「東京アート&ライブシティ」プロジェクトにも参加しています。他のジャンルとのコラボレーション舞台なども企画しながら、伝統文化の神髄をここ銀座の檜舞台から、世界に向けてお届けしたいと思っております。

今回、観世能楽堂にご来場いただく皆様にご覧いただきたいのが、会場入り口前で皆様をお迎えする松羽目(まつばめ、鏡板)です。これは松濤時代の能楽堂2階にあった小さな舞台にあった知る人ぞ知る松羽目で、移転時に行き場がなくなっていたものを、私の提案でここに持ってきたのです。地下三階に降りてくると、自然と能楽堂に足を踏み入れた雰囲気になるとご好評をいただいている松羽目ですので、ぜひご覧ください。

 
公益社団法人 能楽協会

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