日本全国 能楽キャラバン!から、東北地方で行われる公演をピックアップしてご紹介します。能楽公演が多くない場所での開催となります。普段あまり能楽に触れる機会の少ない皆様にも興味と関心をお持ちいただき、公演へ足を運んでいただくきっかけになりましたならば幸いです。
記事中では、とくに 秋田県湯沢公演(8月19日)と青森県八戸公演(11月8日)の見どころをご紹介します。両公演で演じられる能「土蜘蛛」と狂言「柿山伏」はどちらも初心者にも親しみやすい内容の曲ですので、特に初めて能、狂言の舞台をご覧になられる方にはおすすめの公演です。
秋田県湯沢市・青森県八戸市の2公演で能「土蜘蛛」が演じられます
この夏、直近に開催されるのが秋田県湯沢公演です。8月19日(土)に湯沢文化会館大ホールで催されます。
湯沢市は秋田県南部に位置し、湯沢の名が表す通り子安峡温泉、大湯温泉などの温泉地として知られています。能でもよく登場する平安前期の女流歌人 小野小町の生誕の地といわれ、毎年6月には「小町まつり」が開催されます。
酒どころとしても有名で「東北の灘」と称されるほどです。そして、日本三銘うどんのひとつ「稲庭うどん」発祥の地です。
この湯沢公演では狂言「柿山伏」・能「土蜘蛛」を中心とした公演となっています。「柿山伏」は小学校の教科書にも掲載されている人気曲です。能「土蜘蛛」は蜘蛛のあやかしを退治する鬼退治物で、能楽初心者にもわかりやすい内容です。
11月8日(水)には、湯沢公演とほぼ同一の演目で青森県八戸公演が八戸市公会堂大ホールで開催されます。
八戸市は青森県東南部に位置する全国屈指の水産都市。また工業港、商業港も整備され、北東北随一の工業都市としても有名です。
2公演に共通する3つの魅力
魅力① 伝統芸能解説者の葛西聖司氏による講演「頼光と四天王」
葛西聖司氏のお顔を拝見すれば「あ、NHKの伝統芸能番組の司会の人だ」という認識を持つ方が多いのではないでしょうか。葛西氏は元NHKのエグゼクティブアナウンサーで、現在ではその深い見識を活かして日本の伝統芸能に関する講演、解説、執筆などの活動をされてています。
両公演とも葛西氏を講師にお招きし「頼光と四天王」というテーマで講演をしていただきます。
頼光と四天王とは、能「土蜘蛛」のツレ(助演者)として登場する源頼光(みなもとのらいこう/よりみつ)と四人の従者です。 当日の曲目解説なども踏まえつつ、鬼退治の勇者として知られる頼光一党をわかりやすく解説いただけると思います。
青森県八戸公演では、講演タイトルに「三社大祭のヒーロー」と書き添えられています。こちらは、八戸地方最大の祭礼である「八戸三社大祭」と絡めたお話も聞くことができるのではないでしょうか。ご当地の方々にとっては地元のお話と能楽の話を交えた時間になるかと思います。
魅力② 能楽初心者でも安心! 字幕解説付き公演「字幕e能」
「字幕e能」は両公演を主催する鎌倉能舞台が率先して取り組んでこられた「字幕解説付き公演」のシステムです。能楽公演中、プロジェクターに詞章の現代語訳や場面や型の説明などをリアルタイムに表示します。
「謡が聞き取れないのでは……」「観ても意味が分からないのでは……」といった不安を取り除いてくれるため、能楽初心者の方でも安心してご覧いただけます。
魅力③ 能「土蜘蛛」シテ 中森貫太氏による「質疑応答コーナー」
湯沢公演・八戸公演では、シテ方観世流の中森貫太氏(当日の能「土蜘蛛」の主役を演じられます)によるアフタートークがあります。
能楽をはじめとする伝統芸能の世界ではなかなか珍しい取り組みで、しかも直前まで舞台で演じていた能楽師に直接質問することができる貴重な場となります。舞台を見て疑問に思ったことや、能楽師に聞いてみたかったことなど、この機会に質問いただくのもきっと楽しい経験になると思います。
ほかにもございます 日本全国 能楽キャラバン!東北公演まとめ
今回ご紹介した秋田県湯沢公演と青森県八戸公演を含め、東北地方で予定されている日本全国 能楽キャラバン!の公演は下記の通りです。
- 8月19日(土)「盛岡能公演」岩手県民会館大ホール
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狂言 大蔵流「清水」
能 観世流「船弁慶 前後之替」
※その他、連吟、舞囃子、能楽師による解説あり
- 8月19日(土)「秋田県湯沢公演」湯沢文化会館大ホール
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狂言 和泉流「柿山伏」
能 観世流「土蜘蛛」
※その他、舞囃子、講演(解説)、能楽師による質疑応答あり
- 8月20日(日)「宮古能公演」宮古市文化会館大ホール
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狂言 大蔵流「附子」
能 観世流「安達原 白頭 急進之出」
※その他、舞囃子二番、能楽師による解説あり
- 10月23日(月)「福島公演」白河文化交流館コミネス
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能 宝生流「忠信」
狂言 和泉流「棒縛」
能 宝生流「黒塚 白頭」
- 11月8日(水)「青森県八戸公演」八戸市公会堂大ホール
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狂言 和泉流「柿山伏」
能 観世流「土蜘蛛」
※その他、仕舞三番、講演(解説)、能楽師による質疑応答あり
- 2024年1月6日(土)「喜多流 新春盛岡特別公演」盛岡市民文化ホール「マリオス」 大ホール
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狂言 和泉流 曲目未定
能 喜多流「竹生島 女体」
※その他、解説、素謡あり
- 2024年1月13日(土)「北秋田公演」北秋田市文化会館ホール
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能 喜多流「羽衣」
狂言 和泉流 曲目未定
能 喜多流「土蜘蛛」
※その他、仕舞あり
盛岡能公演での能「船弁慶」は能の中でも人気曲のひとつです。歌舞伎にも翻案され歌舞伎十八番になっています。
宮古能公演の能「安達原」と、福島公演の「黒塚」は曲名が違いますが、福島県二本松市に残る安達ケ原の鬼女伝説を元にした同一の曲。観世流のみ「安達原」で、他の四流(宝生、金春、金剛、喜多)では「黒塚」と呼称し、流儀によって曲名が異なる曲の代表的なものです。
福島公演の能「忠信」は、平安末期に活躍した奥州藤原氏の長、藤原秀衡に仕えていた武将・佐藤忠信を主役とした演目です。秀衡の命により兄・継信とともに源義経の家臣となりました。
こうしたご当地ならではの選曲がされるのも地方公演の魅力です。
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