2021年札幌公演 公演レポート

公益社団法人 能楽協会

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北海道/東北 公演レポート

2021年12月25日(土)に日本全国 能楽キャラバン!in 札幌が開催されました。季節はクリスマス。天候不良も危ぶまれましたが無事晴れになりました。ただ、最高気温は札幌の中心でも氷点下3度と厳しい環境でした。そんな中、会場は……?本記事では札幌市周辺の情報を含めた公演レポートをお届けします。

会場までの道のりは多種多様

冒頭にも書きましたが季節はクリスマス、どうやら札幌駅周辺はいつもより人出が多いようでした。

会場の札幌市教育文化会館は距離としては札幌駅より2キロもないのですが、地下鉄・市電・タクシー・バスとかなり選択肢が多く、行きはバスを選択しました。

札幌駅直結のバスターミナルから小樽駅行きに乗り、北1条西12丁目停留所で下車します。北海道のバスは見た目が高速バスをしていて少し緊張したのですが、近距離のバス停も停まってくれるので安心です。

バス停は札幌市教育文化会館裏側にあり、正面にまわると日本全国 能楽キャラバン!in 札幌の看板がありました。

札幌駅上部より西側の風景。北大植物園の更に先が札幌市教育文化会館

北1条西12丁目停留所は札幌市教育文化会館の裏手です

札幌市教育文化会館正面。丁寧に除雪されていてこの写真だけみると冬を感じさせません

会場内の様子 能舞台は前日設営されました

札幌市教育文化会館エントランスは、目的が違う方もいて(どうやら資格試験の会場になっていたようでした)まさに教育と文化が共存していました。

開場しばらくすると、観客の皆さんも多くいらっしゃいました。着物の方が非常に多く、まるで外とは別世界のようでした。入場後のロビー(待合場)では能楽書林さんによる物販もあり、公演休憩時には皆さん物販にて能楽アイテムをお求めになっていました。

能楽公演では入場するとパンフレットを一部もらいます。出演者情報や曲目の解説は書いてあるのですが、本公演のパンフレットはなんと参考詞章がありました。こちらで直前に予習をしました。

そして、能舞台右手側には字幕ディスプレイがありました。上演中の会話内容がリアルタイムで表示されるので、概ね理解でき、初心者に大変優しい配慮でした。ただ、先日公開した記事にあったように、文字を観るのはなく舞台に集中!を意識しつつ、活用しました。

物販コーナー。当日は狂言で出演した山本東次郎先生の直筆サイン本もあり、完売されていました

2階席より舞台を撮影。高さがあり広々とした空間ながらも、能舞台がどの席からも見やすくなっていました。舞台右手側に字幕ディスプレイがあります

実は、大ホールにある能舞台は仮設能舞台で前日に設営されるそうです。脇正面の椅子は仮設能舞台と同じタイミングで設置されています。札幌市教育文化会館YouTubeで公開されている設営の様子をタイムラプスで撮影した動画では、いわゆる普通の舞台から能舞台に変身する様子が見られます。解説もありコンパクトに楽しめますので、是非ご覧ください。

 

公演レポート

今回の公演、シテ方は3つの流儀が集結していたということもあり、観る人を飽きさせない、バラエティ豊かな構成となっておりました。今回は後方で撮影許可をいただいていたので、簡単に舞台の写真と様子をお伝えします。

能 羽衣 盤渉

能 羽衣 盤渉 シテ 大坪喜美雄

宝生流による能「羽衣 盤渉」で、非常に優美な時が続きます。能楽を旅する 佐渡旅で収録した半蔀(はしとみ)に出演した方も数名舞台に立たれていました。

今回の小書「盤渉」は、笛の調子が通常より高くことを指します。序の舞(非常に静かな品位ある舞。羽衣ではほぼ最後)で一層華やかになるということがよくわかり、同時に笛方の技術の高さ、全体の調和に非常に感動しました。

狂言 素袍落

狂言 素袍落 シテ 山本東次郎

大蔵流 山本東次郎先生の十八番と言われている曲で、その素敵な酔いっぷりに見ているだけで皆さん笑顔がこぼれていました。太郎冠者が一瞬素に戻るような言動・振る舞いが幾度かあったのですが、そのなんでもないように思えるシーンがとても笑いを誘っていて思い出すだけでも顔がほころぶ、良い(酔い)時間でした。

仕舞 恋重荷・松風・殺生石

仕舞は観世流による上演です。仕舞とは、能の一部分を謡にあわせて(今回は地謡が5名、丁度囃子方が座る位置に並んでいました)舞う略式上演の一つです。能の中の見どころ・聞きどころが、仕舞として取り上げられます。

実のところ、筆者はこれまで仕舞のどの場面を舞っているのかがいまいち理解できないまま観ることが多かったのですが、今回はパンフレットに仕舞で取り上げられた場面の解説があったため、3曲ともすごく理解でき心打たれました。仕舞の深さが少しだけわかりました。

能 黒塚

能 黒塚 シテ 塩津圭介

休憩をはさみ、最後は喜多流による能「黒塚」です。前場が女の心の迷い・悲しみを表現するシーンが多いのに比例し、後場、ここは実は鬼の住処であったという急展開、そして女改め鬼女が襲いかかり法力で立ち向かうという派手で息を呑む場面で、長丁場とは思えない曲目でした。

大道具に合わせてシテが登場する曲目はいくつかあると思いますが、初見ですと「この小屋の中にまさかシテがスタンバイしているなんて」と驚きを隠せませんでした。

公演を終えて

お客様も、そして会場スタッフの皆様がこの日を心待ちにしていたのが伝わる公演でした。お客様は「良いお年を」と、帰路についていました。

序文の繰り返しになりますが、この日の予報は雪予報で暴風にもなりかねない(帰りの飛行機も天候調整になるかもしれない)状況でした。しかし、皆さんが会場入するお昼は本当に晴れていて、天候も味方した素晴らしい公演でした。

公益社団法人 能楽協会

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