大濠公園能楽堂開館35周年記念 喜多流特別公演「絵馬 女体」シテ方 喜多流 狩野了一先生 インタビュー

公益社団法人 能楽協会

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大濠公園能楽堂開館35周年記念 喜多流特別公演は年明けて1月4日(火)の開催となります。本記事では演目のあらすじや、能「絵馬 女体」でシテを勤められるシテ方喜多流の狩野了一先生に、九州での公演の魅力や見どころなどをお伺いしました。

狩野了一 プロフィール(シテ方 喜多流)

1967年4月熊本生まれ。父、狩野丹秀・喜多流十五代宗家 故喜多実及び塩津哲生に師事。 小学校卒業と同時に、喜多流宗家に入門のため上京。80年「花月」で初シテ。2006年「翁」披キ。全国各地、海外で多数の公演及びワークショップに参加。外国人指導経験あり。重要無形文化財保持者(総合認定)。

「絵馬 女体」公演を目前に控えての想い

なによりも新春。おめでたい公演として選曲いたしました。2022年の明るい平和・幸せを祈願します。

今回、絵馬のシテは初めて勤めます。後シテで登場する天照大神は喜多流では通常演出が男姿なのですが、小書で「女体」とあるように、女姿(女神)で天鈿女命と手力雄命を引き連れて出てきます。

喜多流として大切にしている小書で、自分自身、地元九州、しかも晴れの舞台で勤めさせていただくのは非常に身が引き締まるような想いでおります。

「絵馬」を鑑賞する際のポイント

能「絵馬」喜多流

まず、非常に賑やかな印象でなによりもお正月らしい演目です。音楽的にも、舞など視覚的な部分でも素直に見ていただき、楽しんでいただけます。

前半は老翁が白い絵馬を持ち、老婆が黒い絵馬を持ち、来年の天候を祈願しようということになります。陰陽二つの絵馬を奉納して……と平和や和合を象徴する、非常にのどかなストーリーとなっています。

後半は後シテの天照大神が二人の天鈿女命(女神)と手力雄命(男神)を従えてそれぞれが舞います。そして、天照大神は女姿でありながら神舞を舞うのが見どころです。※通常は「高砂」「養老」など若い男体の神が速いテンポで舞うため、女神で舞うことがとても珍しいです。

絵馬自体出演人数が多く、大がかりな曲となっています。そのため、なかなか地方で演じられる機会がありません。確か30年以上前に熊本で翁と絵馬の上演機会がありましたが、それ以来なかなか機会がなかったと記憶しております。

能楽ファンの皆様へのメッセージ

コロナ禍の影響もありますが、2020年くらいから業界全体で今後の伝統芸能のあり方を見直すきっかけになったと思います。これからも日本を代表する能楽が未来続いていくことを願い、次の世代へとつないでいきます。また、九州も能が大変盛んな土地です。九州地方の能楽ももっと盛り上がるよう、皆様も是非このバトンをつないで応援いただければと思います。

大濠公園能楽堂 再開について

大濠公園能楽堂は1986年に竣工し、福岡市民の憩いの場として多くの方が訪れる大濠公園の入り口にあります。能と狂言の公演を中心に、日本舞踊・詩吟・コンサートなど様々な催しものが行われています。

2021年に行われた東京パラリンピック陸上女子マラソンで金メダルがを獲得した道下美里選手も大濠公園で日々練習を行われていたことでも知られています。

1年間の工事期間を終え、新しくなった大濠公園能楽堂へ皆様是非お越しください。

大濠公園能楽堂開館35周年記念 喜多流特別公演 演目紹介

大濠公園能楽堂開館35周年記念 喜多流特別公演 チラシ

翁 -おきな-

露払いの千歳の舞の後、五穀豊穣、天下泰平を祈る白い翁の静謐な舞。大地を踏みかため、精霊を呼び起こす黒い翁の躍動的な舞。素袍大紋、侍烏帽子で威儀を正し、舞台披きや年頭に舞われる儀式的な一曲。

狂言 末広かり -すえひろかり-

果報者(主人)が来客に末広かり(扇)を贈ろうと、太郎冠者を都へ買いに行かせる。ところが、末広かりが何のことか分からない太郎冠者。声を掛けてきた男の巧みな言葉に、古傘を末広かりと信じ込んでしまう。大喜びの太郎冠者は早速屋敷に帰って、古傘を果報者に見せるのだが……。

能 絵馬 女体 -えんま にょたい-

節分の夜、大炊の帝の臣下が勅命により伊勢斎宮にやって来る。そこに老人夫婦が絵馬を手に現れ、絵馬を掛ける神事を行い、夜半に紛れて去って行く。待つ程に天照大神と男女二神が舞を舞い、岩戸隠れの様を見せる。

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