「日本全国能楽キャラバン！ 特別能公演 三豊」が2023年8月11日（金）に香川県 三豊市文化会館（マリンウェーブ）で開催されます。

公演には「瀬戸内×能楽×映像」というサブタイトルが付けられ、舞台背景に鏡板の代わりに巨大な映像装置を配し、能の世界観を高画質の映像コンテンツで演出します。本記事は、この映像演出を企画され、能「船弁慶」の後シテ（後半の主役）を演じるシテ方喜多流の大島輝久氏に公演の魅力について伺いました。

香川県三豊市での開催について

大島：今回の公演は、瀬戸内海に面した街・香川県三豊市で、瀬戸内にちなんだ能「船弁慶」と、狂言の人気曲「柿山伏」を上演します。「船弁慶」では、前シテ（前半の主役）の静御前は衣恵が、後シテの平知盛の霊を私が勤めさせていただきます。

この地は、シテ方喜多流の能楽師であり姉の大島衣恵が三豊市の「宗吉史跡能」に毎年出演させていただいているご縁がありまして、今年は能楽キャラバン！の公演をさせていただくことになりました。

宗吉史跡能は、古代に瓦を生産した遺跡・宗吉瓦窯（がよう）跡で市民の方々が町おこしではじめられたイベントです。能公演の前に、地元の小学生たちがこの地域のために創られた「宗吉瓦跡」という小謡を披露するのが恒例になっています。その子どもたちや、ご家族の方々にもぜひ本公演に足を運んでいただきたいという想いから、夏休み期間中の開催となっております。

鏡板の代わりに巨大な映像装置を配する演出について

大島：本公演では、ホールでの能公演時にいつも課題となる舞台背景に大きな工夫を凝らしました。鏡板の代わりに縦3メートル×横8メートルの巨大なLEDパネルの映像装置を配した特別映像演出を予定しています。

映像は、平家ゆかりの地でもある鞆の浦（広島県福山市）で、新進気鋭の写真家・鈴木心氏に撮影していただきました。鞆の浦の美しい風景をタイムラプス撮影し、太陽が昇ってから日没までの移り変わる大自然の景色をLEDウォールに映し出します。

事前撮影した静御前と平知盛の舞の映像を鞆の浦の映像に織り交ぜることで、能面の表情や装束などの細かいところまで舞台最後列のお客様でもはっきりとご覧いただけるように配慮しました。このような映像演出は、ホールでの能公演では初めての試みになるでしょう。

もちろん、主体はあくまでお能となりますが、ゆっくりと変わりゆく波や光の映像に、静御前や平知盛の人生を重ね合わせて、無常感など能の世界観をよりお伝えできたらと願っています。

能紙芝居など初めて能を見る方にも楽しんでもらえる企画が満載

大島：本公演では、狂言と能の上演前に、演者みずからが曲解説をします。とくに、能「船弁慶」のあらすじ解説は、紙芝居、ナレーション、お囃子の笛、そして謡を交えた「お能紙芝居」形式で楽しくわかりやすくご紹介します。

この「お能紙芝居」は、2006年に長女が生まれて、幼子にもお能をわかりやすく伝えたいとの思いから創りはじめました。以来、様々な演目の紙芝居を創り大島能楽堂の定期公演などで披露し、好評を得ています。とくに今回は、紙芝居をLEDウォールに映しての巨大紙芝居となります。どうぞご期待ください。

このほかにも、能の楽器・囃子について実演を交えて紹介しながら会場の皆さんに掛け声なども一緒に体験していただく「能楽囃子レクチャー」や、スマホでご覧いただける字幕サービスなど、はじめて能をご覧になる方にも楽しんでもらえる企画をご用意してしますので、ぜひご来場いただけたらと思います。