能楽キャラバン!奈良開催 特別公演に寄せて

公益社団法人 能楽協会

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多くの方に能楽を触れていただき、文化の力で皆様に勇気と活力をお届けするべく、「日本全国 能楽キャラバン!」は、全国20地域・全71公演と、かつて無い規模で開催しています。


今回、能楽発祥の地・大和(奈良県)では、シテ方五流(観世・金春・宝生・金剛・喜多)全てが出演する、3日間の意欲的な特別公演を実施します。

現在の能楽は、南北朝時代より続く「大和猿楽」の流れを汲みます。能楽の故郷で味わう歴史と文化溢れる能楽の世界。感染症終息を願い、この世界に誇る「能楽」を未来に伝える公演を今年実現でき、大変喜ばしく思っています。
ぜひ、注目いただければ幸いです。

能楽の故郷・古都奈良

大和は 国のまほろば たたなづく 青がき 山ごもれる 大和し美 (うるわ)し

美しい言葉の歴史に育まれた日本。そこで生まれた、奉仕芸能としての歴史を有する「能楽」は、室町時代において大和四座(観世・金春・宝生・金剛)として、現在の奈良県を本拠地と据えて活動していました。江戸時代には喜多流が生まれて現在の五流が揃います。能楽は今日に至るまでの約700年近い歴史を有し、2007年にはユネスコの世界無形文化遺産に登録され、今なお現存する世界最古の舞台芸術として全世界から注目を集めています。

まさに能楽の原点は奈良であり、能楽の故郷とも呼ばれる地域と言えます。

少し話が逸れますが、能楽が生まれた後、イングランドでは演劇を代表する劇作家ウィリアム・シェイクスピアが活躍していました。ロンドンにあるグローブ座という劇場はシェイクスピアが活動拠点として建設し、今でも復元という形でシェイクスピアズ・グローブ劇場があり、演劇が頻繁に上演されています。ここでシェイクスピアの作品を演じる時、役者は原点に立ち戻るという特別な気持ちで上演するそうです。

今回、大切な奈良という土地での公演には、特別な想いをもって臨みます。

11月18日(木)公演のご紹介

11月18日(木)と25日(木)の会場となる三輪山会館能楽堂は、日本最古の神社と伝わる大神神社の境内に神社関係者の奉仕により令和元年に建設されました。

能 金剛流「三山」

能 金剛流「三山」

大原の良忍聖は大和三山の中、耳無山のほとりで一人の女に呼びとめられる。女は三山物語を語り、桂子と名乗り回向を頼み消え失せる。弔いの内、桜子と桂子の霊が現れ争が、やがて上人の念仏を受け恨みを捨てて共に成仏してゆく。大和三山の伝説を元に創作された悲しくも美しい古代のロマンの物語です。

狂言 大蔵流「仏師」

すっぱ(詐欺師)が田舎者をだまそうと、仏師と仏像に早替りしますが……。

また、金春喜勝の娘を娶った喜多七太夫より起こった喜多流の舞囃子「龍田」をご覧頂き、奈良の歴史と共に能楽をお楽しみ頂きます。

11月25日(木)公演のご紹介

金峯山寺(奈良県吉野郡吉野町)に今も祀られる過去、現在、未来の蔵王権現。7世紀まで続くさまざまな紛争を治めるために権現様を祈り出したのは、日本独自の山岳信仰から生まれたスーパースター、役行者(えんのぎょうじゃ)です。山伏の世界と蔵王権現の威力を、狂言と能の両面からご覧いただきます。

能 宝生流「国栖」

能 宝生流「国栖」

大伴皇子から逃れ吉野に入った天武天皇。老夫婦が家にかくまい、占いで天皇の吉兆を予現し天皇を慰めます。夜になると天女が現れ舞を舞い、これにひかれて吉野の神々や蔵王権現も現れて天武の御代の将来を祝福します。
壬申の乱、前夜を描いた人気曲です。

狂言 和泉流「腰祈」

永年の修行を終えた山伏が、本国へ帰る途中、都の祖父(おおじ)を見舞いに立ち寄ります。久々に会った祖父の腰がすっかり曲がっているので、山伏は孝行心より治そうと考え、祈祷をはじめますが……。

更に、大和・葛城山を舞台とした金春流の舞囃子「葛城」を上演します。

12月22日(水)公演のご紹介

大和を中心とした全体構成で、能楽の原風景を残した演目を上演します。能楽ファンならびに初めてご覧になる方も、日本の歴史と能楽の深いつながりを感じていただける内容です。

能 観世流「三輪 白式神神楽」

能 観世流「三輪 白式神神楽」

三輪山の玄賓僧都のもとへ毎日樒(しきみ)と水を届けていた女が、ある日二本杉の下待てと言い残して姿を消します。僧都が女に与えた衣の掛かる杉の下で祈ると、三輪明神が現れ、三輪山伝説などを物語り、神遊びの神楽を奏して舞を舞います。この作品は、神秘的で幻想的な三輪の地を舞台としています。今回は特殊演出「白式」を付けて能楽協会理事長 観世銕之丞のシテで上演します。

狂言 大蔵流「寝音曲」

酒宴の帰りの夜。たまたま、太郎冠者の謡を偶然聞きつけた主人は、翌日自分の前で唄ってみよと命じます。太郎冠者は度々謡わされては迷惑と考え、「酒を飲まなければ謡えない」などと次々に条件を付けて……。
大蔵流宗家大藏彌右衛門、善竹弥五郎のまたと無い共演でお届けします。

能 金春流「野守」

飛火野野守の伝説を取り上げた能「野守」は、鬼神の力強い舞の中にも風情を感じる演目です。
地元奈良で活動する金春穂高をシテに、能楽最古の歴史を誇る金春流が上演します。

公益社団法人 能楽協会

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