日本の蒸留酒の原点と言われる泡盛は、沖縄を代表する酒です。琉球王朝時代には、外交の場や江戸幕府への献上品として用いられていました。
沖縄にある現在40数か所の泡盛の蔵元は、各々に独自の酒作りを営みながら、泡盛の文化と歴史を守り続けています。泡盛の蔵元を巡る旅へご案内しましょう。
本記事でご紹介の泡盛蔵元一覧 ※所在地「蔵元名」/ 主な銘柄 / 本コラムでの紹介内容
- 北部エリア
- 金武町「崎山酒造廠」 / 松藤 / 見学&試飲
金武町「金武酒造」 / 龍 / 鍾乳洞蔵
※蔵の見学、古酒預かりサービスもあります。見学のみも可。要予約。 - 中部エリア
- うるま市「神村酒造」 / 守禮・芳醇浪漫・暖流 / 古酒預かり
- 南部エリア
- 那覇市「識名酒造」 / 時雨・歓 / 見学&試飲
※工場の規模、スタッフの都合により、少人数(2~3人)での見学となります。工場見学の際は事前にお問い合わせください。
那覇市「瑞泉酒造」 / 御酒・瑞泉・おもろ / 見学&試飲
豊見城市「忠孝酒造」 / 忠孝・よっかこうじ・夢航海 / 古酒預かり - 宮古エリア
- 宮古島市「株式会社多良川」 / 多良川・琉球王朝・久遠 / 洞窟蔵
※蔵の見学、古酒預かりサービスもあります。見学のみも可。要予約。 - 八重山エリア
- 石垣市「八重泉酒造」 / 八重泉・黒真珠・島うらら / 見学&試飲
蔵の見学も利き酒も楽しめる蔵元
沖縄では多くの泡盛の蔵元で、工場や貯蔵庫の見学とともに試飲サービスを行っています。
琉球王朝時代に泡盛の製造が許されていた首里三箇(しゅりさんか/鳥堀町、赤田町、崎山町)と呼ばれる首里城下の町には、今も2つの蔵が残っており、見学や試飲ができます。2つの蔵はいずれも首里城から近く、蔵めぐりのはしごも楽しめます。
「識名酒造」は、沖縄最古と言われる約150年物の古酒を保存する蔵元。第2次世界大戦の戦火を潜り抜けた沖縄最古の古酒があります。
「瑞泉(ずいせん)酒造」は、ガラス越しに甕貯蔵庫が見学できる蔵元。写真のガラスの奥が甕貯蔵庫になっています。手前のショップでは泡盛の試飲もできます。
本島北部の金武町にあるコンペや鑑評会の受賞経験も多い「崎山酒造廠(さきやましゅぞうしょう・株式会社 松藤)」では、同じ銘柄で度数や年数の違いを試せます。全国酒類コンクール泡盛部門の第1位に輝いたことのある人気銘柄「松藤」が古酒を含めて数種類用意されており、ちょっとした利き酒気分も味わえます。
石垣島には大人のちょい飲み体験ができる蔵元があります。
「八重泉(やえせん)酒造」では、酒造見学、泡盛のオリジナルブレンドとカクテル作り、バーカウンターでおつまみ付きの泡盛カクテル試飲会といった内容の八重泉体験プランを設けています。変化球を楽しみたい方は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
じっくりと熟成させて育てる古酒預かりサービスを行う蔵元
3年以上寝かせて熟成させた泡盛を沖縄では古酒(くーす)と呼びます。 沖縄には結婚や出産など、節目の年に泡盛を購入して古酒を育てる風習があり、泡盛を預かって数年熟成させた後に出荷する古酒預かりサービスを行っている蔵が見られます。
熟成甕も自社で手掛ける「忠孝(ちゅうこう)酒造」では、ザ・オーナーズというシステムがあり、地下蔵でクラシックを聴かせながら泡盛を熟成させるサービスを行っています。また、この蔵では手作り泡盛体験(要予約)で、杜氏とともに米蒸しや麹種付けなどの泡盛を作ることができます。
オーク樽で泡盛を作ることで知られる「神村酒造」もまた、地下蔵預り古酒のサービスがあります。こちらでは満期を迎えると、預けた際に数年先の自分に向けて記入したメッセージ入りのラベルや写真とともに古酒が届けられます。
時を重ねた古酒は香りが高く、とてもまろやかな味わいになります。旅の記念に、泡盛を預けて古酒を育ててみてはいかがでしょう。
自然が生んだ造形を利用した蔵で古酒を醸す蔵元
沖縄には鍾乳洞や洞窟といった、自然の造形を利用した蔵を持つ蔵元があります。
本島北部にある「金武(きん)酒造」は、金武鍾乳洞の中に古酒蔵を構えています。
地下30m、長さ270mという鍾乳洞の壁面に設置された大棚には、1万を超える泡盛が貯蔵されており、その光景はまさに圧巻の一言です。
宮古島の「株式会社 多良川(たらがわ)」では、神聖な森として崇められるういぴゃー森近くの洞窟にういぴゃーうぷうす蔵を設け、泡盛を育てています。
宮古の森の地下に広がる洞窟貯蔵庫には泡盛の甕が並べられ、静かな時間の中で熟成するのを待っています。
番外編 オリオンハッピーパーク できたてビールが味わえる
沖縄の酒なら泡盛だけでなくオリオンビールも外せない、という声も多いのではないでしょうか?
オリオンビールの名護工場には、製造工程や瓶詰めなどの工場見学と試飲が楽しめる「オリオンハッピーパーク」という施設が併設されています。
できたてのオリオンビールが楽しめることもあり、いまや県内外から多くの人々が訪れる名護のランドマーク的な存在となっています。
オリオンビールはフルーティーでコクがありながらスムースな味わいが人気。骨太な泡盛とはまた違った魅力があります。泡盛の酒造めぐりに加えて、ビール工場に立ち寄ってみるのもまた一興です。
蔵元を知ってこそ泡盛の味わいも深まる
蔵元めぐりは酒を楽しむだけでなく、蔵人の思いや蔵仕事に触れる機会でもあります。蔵人と出会い泡盛が作られる様子を目にすれば、蔵の銘柄をより深く知ることができ味わいも違って感じられます。泡盛の文化は15世紀半ばの発祥から約600年の歴史を持ちます。伝統の味を守り次世代へと引き継ぐ姿は、700年近い歴史を脈々と繋いできた能楽文化ともどこか相通じるものがあるように思えました。
沖縄への島旅の目的にぜひ泡盛の蔵元めぐりを加えてみてください。
写真協力/沖縄県酒造組合、©沖縄観光コンベンションビューロー