日本には今も見学のできる城が200以上残っていると言われています。こうした全国各地の城郭では、季節の祭りはもとより、プロジェクションマッピングやライトアップなど、それぞれに趣向を凝らした催しが数々行われています。

本記事では、城を舞台に開催されているイベントをご紹介いたします。イベント情報を探りながら、名城のいくつかを旅していきましょう。

弘前城(青森県) 東北唯一の現存天守を残す城に咲く日本屈指の桜

弘前藩藩主・津軽家の居城であった弘前城は、東北で唯一、江戸時代以前に建てられた現存天守の残る城です。その敷地は現在、屈指の桜の名所として知られる弘前公園となっており、一年を通して四季折々のまつりが開催されています。

春は約2,600本の桜が咲き誇る弘前さくらまつり、秋は色彩豊かな紅葉が美しい弘前城菊紅葉まつり、そして冬には雪化粧した天守閣と雪燈籠が郷愁を誘う弘前城雪燈籠まつり

いずれも園内や天守にライトアップ演出が施され、見応えたっぷりの催しですが、中でも圧巻なのは桜の開花とともに開催される弘前さくらまつりでしょう。照明に浮かぶ夜桜や、散り始めた花びらが外濠を一面に染める花筏(はないかだ)など、日本三大桜の一つと謳われる名所ならではの景観が楽しめます。弘前城と桜の見事な競演は、一度は目にしたい絶景です。

弘前城天守と桜
現在、石垣修復のために曳屋(城をそのままの状態で移動する建築工法)で移動している弘前城天守
  • 写真提供:弘前公園総合情報サイト
1-2_弘前城の夜桜ライトアップ
弘前城の夜桜のライトアップ。水鏡に映る桜がじつに妖艶
  • 写真提供:弘前公園総合情報サイト

鶴ヶ城(福島県) 難攻不落の城を灯すデジタルアートと伝統の絵ろうそく

東北エリアからもうひとつご紹介するのは、戊辰戦争で新政府軍の猛攻に耐え、難攻不落の城として名を馳せた鶴ヶ城です。鶴ヶ城では令和5年(2023)4月の天守閣リニューアルオープンを控え、令和4年(2022)10月より光のアートプロジェクト「鶴ヶ城 光の歴史絵巻」を開催しています。
プロジェクションマッピングやVRシアターなどのデジタルアートで、鶴ヶ城や鶴ヶ城を治めた歴代の名将の歴史を紹介する催しとなっています。

こうした新しい試みに加え、平成12年(2000)にスタートした会津絵ろうそくまつりもまた鶴ヶ城では注目したいイベントです。絵ろうそくは菊や牡丹といった季節の草花が描かれた会津の伝統工芸品。会津絵ろうそくまつりでは鶴ヶ城をはじめ市内の各所に、およそ1万本もの絵ろうそくが灯されます。

 

2_会津絵ろうそくまつり
会津の伝統工芸品である絵ろうそくを広めるべく始まったという会津絵ろうそくまつり

松本城(長野県) 光と氷が紡ぐ冬のフェスティバル 

日本最古の五重天守を持ち、国宝として知られる松本城もまた、春夏秋冬で多くのイベントが行われている城です。

桜の開花宣言3日後より8日間開催される夜桜会、薪能、雅楽、古流砲術演武など、様々な催しが年間を通して企画されていますが、中でも例年1月下旬に行われる国宝松本城氷彫フェスティバルは、寒さ厳しい信州の冬を彩る一大イベントとして親しまれています。

全国屈指の氷彫師による氷の彫刻が松本城をバックに展示され、夜にはレーザーマッピングやイルミネーションの光が松本城と松本市街を華やかに包みます。

 

3_松本城氷彫フェスティバル
白漆喰の壁と黒漆塗りの下見板の対比が美しい松本城。きりっとした冬の空気に氷の彫刻が映える

大阪城(大阪府) 城を巡りながら歴史の謎を解く体験型イベント

大阪城公園の中心にある大阪城は、時間とともに変化する点灯や大規模なイルミネーションなど、ライトアップに力を入れている城ですが、じつは隠れた人気イベントがあります。

2015年に始まった歴史リアル謎解きゲーム「謎の城(なぞしろ)」は、大阪城や大阪城公園を巡りながらヒントを集め、歴史の謎を解いていく体験型イベントで、毎年多くの参加者が集う話題の催しです。

令和5年(2023)は「徳川家の威信を見せよ!」と題して、大坂の陣で落城した大阪城が徳川大阪城として再建されるまでの歴史をテーマに展開しています(開催期間:6月30日(金)まで)。史実に基づいたストーリーを追いながら大阪城公園を周遊でき、観光と歴史探求が同時に楽しめると人気を呼んでいます。

 

4_大阪城
大阪城公園のランドマーク的存在、大阪城天守閣

丸亀城(香川県) イルミネーションが誘う天守への道

四国には江戸時代以前の現存天守が残る城が4つありますが、その中の一つ丸亀城では、平成29年(2017)からキャッスルロードというナイトイベントが催されています。

色鮮やかなプロジェクションマッピングやイルミネーション、竹灯りといった光の演出で大手門や石垣、また山上まで続く登城道を彩り、訪れた人を丸亀城天守まで誘います。 9月中旬から11月下旬にかけて開催されるキャッスルロード。幻想的な姿を見せる丸亀城で秋の夜長を満喫しようと、県内外から多くの観光客が足を運びます。

 

5-1_丸亀城キャッスルロード_大手門
プロジェクションマッピングで彩られた大手門と、ライトアップされる丸亀城
  • 写真協力:丸亀市教育委員会、一般財団法人丸亀市観光協会
5-2_丸亀城キャッスルロード_見返り坂
カラフルな照明でライトアップされた見返り坂。山上の天守へと続く道
  • 写真協力:丸亀市教育委員会、一般財団法人丸亀市観光協会

イベントを通じて城巡りを楽しもう

ここまでご紹介した城郭以外にも、日本各地に残る多くの城で様々なイベントが行われています(下記参照)。各種の祭りや桜・紅葉といった季節の自然に合わせたライトアップ、夜間特別公開など、探してみると思いの外バラエティに富んだ催しが見つかります。
イベントを目的に楽しむ城巡り。見どころが増えて、城探訪の面白さをより味わえるのではないかと思います。

桜×ライトアップの楽しめる城

彦根城、上田城、姫路城、高田城、新発田城など

紅葉や月×ライトアップの楽しめる城

彦根城、姫路城など

夜間公開やナイトミュージアムが開催されている城

広島城、岐阜城、伊予松山城、松本城、丸亀城

除夜の鐘・初日の出など年末年始イベントのある城

除夜の鐘:彦根城
初日の出:松江城、津山城

プロジェクションマッピングやイルミネーションのナイトイベントを行っている城

丸岡城

各イベントは、コロナ禍で延期される可能性もあり、また開催期間が限定されているものもあります。開催状況や開催時期については各城の公式ウェブサイトなどでご確認ください。

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