奥州藤原氏の都として栄えた平泉ですが、温泉の歴史は比較的新しく、1998年に温泉が掘削されて以来、町内でも温泉が楽しめるようになりました。しかし、平泉の周辺の一関市、奥州市は古くからある温泉の宝庫。体も心もほかほかに温めてくれる旅情あふれる温泉が点在しています。平泉温泉とともに、その周辺にある温泉地をご案内します。

平泉温泉

1998年に掘削された新しい美肌の湯

平泉温泉
旅の途中でも気軽に利用できる町営の日帰り温泉施設「悠久の湯 平泉温泉」

平泉温泉は1998年に掘削された新しい温泉。無色透明ですが、肌に吸いつくような柔らさがあります。泉質はナトリウム塩化物泉(低張性弱アルカリ性高温泉)で化粧水も必要ないほどに肌がつるつるとなる美肌の湯と言われています。

地元の人々も多く利用するため、旅情を肌で感じることができるのが「悠久の湯 平泉温泉」。平泉駅から徒歩12分、毛越寺と中尊寺のほぼ中間という好立地にある町営の日帰り温泉施設です。タオル類のレンタルがあるので、旅の途中でも手ぶらで気軽に利用できます。

半円形の大浴場は、高い天井から光が差し込んで明るく広々。サウナと水風呂のほか、畳の休憩室もあり横になって休むことができるのが魅力です。館内は、木をふんだんに使ったぬくもりあふれる内装で、ロビーの特産品販売コーナーでお土産を買ったり、情報コーナーで平泉観光の情報を調べたり、くつろぎのひとときを過ごすことができます。

泊まりがけで平泉温泉を楽しむのなら「平泉ホテル武蔵坊」。悠久の湯のすぐ隣にあり、町内で一番高い建物とあって眺望が抜群。平泉の町並みを一望できる展望風呂からは天気が良いと束稲山(たばしねやま)を望むことができます。料理も地産の前沢牛が、すき焼きやしゃぶしゃぶ、鉄板焼きなどで楽しめます。

厳美渓温泉

渓谷美と名物「空飛ぶだんご」も一緒に体験

厳美渓温泉
年間100万人以上の観光客が訪れる名勝・天然記念物の厳美渓

厳美渓(げんびけい)は、平泉駅から車で約15分、一関市の磐井川中流に連なる渓谷で国の名勝・天然記念物。エメラルドグリーンの水流に奇岩、巨岩、深淵、滝などの渓谷美が約2kmにわたって続いています。

この渓流沿いにある厳美渓温泉では渓谷美とともに肌に優しい温泉が楽しめます。泉質は無色透明のナトリウム塩化物・炭酸水素塩泉(低張性弱アルカリ性高温泉)で、肌の新陳代謝を促進してつるつるにする美肌成分が含まれています。

「厳美渓温泉 いつくし園」は、厳美渓の畔に建つ芝生と竹林に囲まれた閑静な宿。大浴場の御影石づくりの広い湯船と、檜造りの露天風呂からは磐井川のせせらぎを望むことができます。日帰り入浴も可能です。

いつくし園
季節の風を肌で感じることができる「厳美渓温泉 いつくし園」の檜造りの露天風呂

もう一つ、厳美渓で忘れてはならない名物が「郭公屋(かっこうや)」の「かっこうだんご」。厳美渓の岩場にある東屋から板を木槌で叩いて注文すると、対岸のお店からロープを伝ってスルスルと籠に乗っただんごが届けられることから「空飛ぶだんご」と呼ばれ、古くから人気があります。だんごも柔らかくて美味です。

空飛ぶ団子
渓流を渡る名物だんごが入った籠
かっこうだんご
かっこうだんごは、あん・ごま・みたらしの3本入で500円。12月~3月中旬頃までは冬季休業なので要注意

焼石岳温泉

源泉が異なる2つの泉質が一度に楽しめる

焼石岳温泉
「焼石岳温泉 焼石クアパーク ひめかゆ」の露天風呂。夜は木々の間から星空が見え、冬場は浴槽の縁に雪が積もり雪見風呂を楽しめる

焼石岳温泉は平泉駅から車で約30分、奥州市の最西部に位置し、栗駒国定公園焼石岳を望むロケーション。周辺には「胆沢(いさわ)ダム」と奥州湖があり、登山をはじめ、ラフティング・カヌー・カヤックなどのアウトドアアクティビティーが体験できるほか、冬季には近くのひめかゆスキー場でスキーなどを楽しむことができます。温泉は、源泉が異なる2種類の泉質が楽しめるのが特徴です。

その2つの泉質を館内2箇所の施設に備えているのが「焼石岳温泉 焼石クアパーク ひめかゆ」

開業当時からこんこんと湧き出ている源泉を使用しているのが、宿泊棟のひめかゆほっと館の大浴場と露天風呂。泉質は含硫黄ナトリウム塩化物泉(高張性中性高温泉)で、湯冷めしにくく、硫黄成分を含んでいるため気管支を拡張させ痰を出しやすくする効果やシミ予防効果が謳われています。一方、新しい源泉を用いているのは日帰り入浴センターゆうゆプラザにある大浴場。泉質はナトリウム塩化物・炭酸水素塩泉(高張性中性高温泉)で石鹸のように皮膚を洗浄し肌を滑らかにするつるつるもちもちの美肌の湯。こちらにはサウナと電気風呂も併設されています。これらすべての風呂を日帰り入浴で楽しむこともできます。

焼石岳温泉 焼石クアパーク ひめかゆ ロビー
開放感たっぷり、土産物も充実している「焼石岳温泉 焼石クアパーク ひめかゆ」のロビー

須川温泉

デトックス効果抜群の蒸し風呂も体験できる昔からの湯治場

須川高原温泉
正面に大迫力の奇石「大日岩」が鎮座する「須川高原温泉」の大露天風呂

須川温泉は、平泉駅から車で約1時間、栗駒山の北側山腹、標高1125メートルに位置する温泉地。岩手・宮城・秋田の三県にまたがる雄大な眺望と、毎分6000リットルも湧き出る豊富な湯量で知られています。硫黄の香りがし、入るとピリッと感じる湯の泉質は強酸性泉(低張性酸性高温泉)で古くは「酢川」と記されていました。効能豊かな湯として知られ湯治場としても人気があります。

須川温泉の岩手県側にある宿が「須川高原温泉」。古くから湯治客が多く、湯治の場合は自炊棟を利用できます。

風呂は4種類あり、隠れた名物風呂が、宿の裏手から100メートルほど登った先にある天然蒸気ふかし湯「おいらん風呂」。小さな木造の小屋に噴気孔があり、その上にゴザを敷いて横たわり毛布をかぶって身体を温める独特の蒸し風呂です。そのほか、雄大な自然の中にあり30~50人ほどが入ることのできる大露天風呂をはじめ、大浴場、中浴場と様々な風呂が楽しめ、日帰り入浴も可能です。

なお、11月上旬〜5月上旬にかけては冬季休業となるのでご注意ください。

須川高原温泉 足湯
「須川高原温泉」の前には無料で入ることができる足湯もある

平泉旅はぜひ温泉とセットで!

平泉旅は、世界遺産の中尊寺、毛越寺、観自王院跡などの史跡を巡ると、たとえ車であっても各施設内を歩く距離は長くなります。そんな体と心を温め癒やしてくれるのがほかほかの温泉です。

平泉の温泉宿を旅の拠点にしたり、またはその周辺の温泉宿に泊まったり、はたまた旅の途中で温泉に立ち寄って体力を回復したり………。平泉旅はぜひ温泉とセットで計画することをおすすめします。

 

写真協力:岩手県観光ポータルサイト・いわての旅いちのせき観光Navi・いち旅!

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