
城造りの名手と謳われた加藤清正によって、慶長12年(1607)に築城された熊本城。その魅力は、何といっても反り立った石垣に代表される堅牢さにあります。平成28年(2016)の熊本地震では天下の堅城も甚大な被害を受け大きな痛手を負いました。地震から6年経ち、熊本城は一歩一歩復興の道を歩き始めています。日々変化を重ねる復興状況とともに、熊本城の見どころを巡ってみましょう。
- 熊本城の復興状況などの記載は2022年11月現在のものです
勾配の美しさが際立つ石垣
築城当時の建築技術を今に伝える貴重な文化遺産
熊本城の大きな見どころは、末広がりのカーブを描く石垣です。扇の勾配は上に登るほど反りの角度が急になり、敵の侵入を許さないことから「武者返し」と呼ばれています。
なかでも見逃せないのは、2つの時代の石垣が同時に楽しめる「二様(によう)の石垣」です。加藤清正と後の城主・細川忠利の時代の石垣が並んで見られる場所ですが、近年の研究では新しい石垣は加藤清正の息子・忠広の時代に築かれたと考えられています。
熊本地震では石垣の約3割が被害を受けています。二様の石垣は一部に沈下はありましたが、当時の姿を留めています。現在は特別公開エリアに設けられた見学通路から見学できます。

復興のシンボル、復活した天守閣
「波乱に満ちた熊本城の歴史」をテーマに展示をリニューアル
熊本城の天守は西南戦争の際、薩摩軍の総攻撃直前に一度焼失しました。熊本地震で被害を受けた天守閣は、昭和35(1960)年に外観復元されたものです。鉄骨鉄筋コンクリート造りでの再建工事であったため、熊本地震では建物自体のダメージは少なかったものの、天守閣の屋根瓦や鯱(しゃちほこ)が落下。また柱の損傷などもあったため、内部公開の中断を余儀なくされました。
地震後、熊本市は復興事業としてまず天守閣の復旧に着手しました。令和3年(2021)3月に復旧を終え、6月より天守閣の内部公開を再開しています。リニューアルした天守閣では、築城から熊本地震の罹災まで、いくどかの危機を乗り越えてきた熊本城の歴史を展示しています。
さらに最上階には再び展望フロアが設けられ、阿蘇の山々に抱かれた熊本の街並みが見渡せる眺望が戻ってきました。熊本城のシンボルは、まさに復興のシンボルにもなっているのです。
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大名文化を再現した本丸御殿大広間
閉鎖中の「昭君之間」、ほぼ無傷だった闇り通路
本丸御殿大広間は築城400年を記念して、平成20年(2008)に古い文献や発掘調査を手掛かりに復元されました。華やかな本丸御殿大広間は多くの観光客の目を楽しませてくれるスポットでしたが、震災により一番の見どころである「昭君之間(しょうくんのま)」の床が沈下。また壁の剥がれ落ちた広間もあったため、現在は見学不可となっています。
一方、御殿の床下にある「闇(くらが)り通路」と呼ばれる地下通路は幸いなことにほぼ無傷だったため、見学通路として通り抜けできます。闇り通路は天守閣に通じる通路で、暗さが敵を不安にさせる効果があることから、重要な防衛設備だったと言われています。
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修復が待たれる重要文化財
歴史的価値の高い宇土櫓の復旧工事がスタート
熊本地震では、櫓や門など13に及ぶ重要文化財のすべてが被災。いくつかの文化財は既に解体保存が行われ、修復が始まっています。
重要文化財の櫓群の中でも特に歴史的価値が高いとされる「宇土櫓(うとやぐら)」は令和4年(2022)秋より復旧工事が始まりました。宇土櫓は三重五階地下一階という大きな規模の造りから第三の天守と呼ばれ、唯一築城当時の面影を残していた櫓。趣のある姿に再会できる日を待ち望まれています。


震災後に設けられた特別公開エリア
被害状況と修復の様子が見られる特別見学通路
熊本城は現在、復旧工事に伴って立入制限が行われています。工事期間中は、北ルートと南ルートと呼ばれる2つのルートから城内を見学できるようになっています。
南ルート
地上6mの高さに造られた特別見学通路。空中散歩さながらに、各所の被害状況と復旧の様子を確認できます。
これまでとは違うアングルの見学は新しい視点が得られます。高い通路からは大天守と二様の石垣を同時に望むことができ、絶好の撮影ポイント。
北ルート
宇土櫓の修復により、日曜と祝日のみの開放となっています。訪れる際にはご注意ください。


復興に向けて日々変化する熊本城の姿を楽しもう
幾度の災難に見舞われながら、その度に復興を成し遂げてきた熊本城。平成28年(2016)の地震でもまた甚大な被害を受けましたが、改めて再建の道を辿ろうとしています。復興の道半ばの今だからこそ見ることのできる景色があります。新たな歴史の1ページを刻む姿を目に焼き付けるのは、熊本城の新しい楽しみ方と言えるでしょう。
写真協力:熊本城総合事務所