佐渡の美酒を巡る旅

佐渡の能楽は“民衆能”として発展したことから、ひと昔前までは、肴謡(さかなうたい)といい、祝言の席、お祭り、節句など人が寄り集まる宴席では決まって謡が披露されました。その場に欠かせなかったのが佐渡の地酒。集落の人々が集い酒を酌み交わすことで絆が生まれ、能楽もまた受け継がれてきました。近年では国内はもとより海外からも高評価を受けている佐渡の美酒を巡る旅へご案内しましょう。

自然がもたらす佐渡の美酒

佐渡の酒造りは金山の繁栄とともに発展を遂げ、最盛期には200以上の蔵があったといいます。

美味しい酒造りに欠かせないのが水と米。
佐渡は、北に大佐渡山脈、南に小佐渡山脈が峰を連ね、冬には多くの雪を戴きます。それが融けて地中深く染み込み、自然の濾過により再び地上に湧き出す清水は清冽を極めます。佐渡の水は質・量ともに酒造りに最適といえます。

また、佐渡は米どころとしても新潟県の魚沼と並び称される名産地として知られています。酒を造る米として有名な「山田錦」と「五百万石」をかけ合わせ、新潟県が15年の歳月をかけて完成させた新品種「越淡麗(こしたんれい)」などの酒米を、佐渡の各蔵では契約農家とともに育てています。

佐渡の自然がもたらす豊かな水と高品質な酒米、そして蔵元のたゆまぬ努力が美酒を造り出しています。

伝統と革新の蔵元「北雪酒造」で酒蔵見学と試飲に挑戦

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明治5年創業の北雪酒造

佐渡では現在、5つの蔵元が趣向を凝らして酒造りに励んでいます。各蔵元では酒蔵見学や試飲が行われているので、佐渡の蔵元を巡り、お気に入りの一本を見つけましょう。

「北雪酒造」(南佐渡地区)

佐渡の水・米・風土にこだわり、熟練の技で酒を造る一方、遠心分離機でもろみを搾るなど斬新な発想で新たな挑戦を続けている蔵元です。ニューヨークやロンドンなど世界50店舗を展開する有名レストラン「NOBU」の日本酒を一手に引き受け、過去には「NOBU」のビジネスパートナーである俳優ロバート・デ・ニーロさんが酒蔵を訪れ、佐渡中が大騒ぎとなりました。ちなみに、その際、デ・ニーロさんは佐渡の演能も鑑賞されたといいます。
代表銘柄「大吟醸YK35」は、国内外のさまざまなコンテストで受賞多数。焼酎や梅酒、リキュール酒なども手掛けており、その中でも能楽ファンにおすすめなのが「牡丹リキュール」。佐渡に流された世阿弥が配所に向かう途中に立ち寄った長谷寺に咲く牡丹を摘み取り、米焼酎に浸して造ったリキュールで爽やかな香りが特徴です。

酒蔵見学は事前の予約が必要。雑菌予防のため、ヘアキャップを着用し、見学用スリッパに履き替えてから、見学スタートです。

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オーク樽の中は焼酎。北雪酒造では日本酒のほかにも焼酎など幅広く手掛けている

最初に案内されたのはオーク樽が並ぶ貯蔵室。実はこれ、焼酎の貯蔵樽で、10年ほど寝かせることでウイスキーのような香りがするマイルドな味わいに仕上がるそうです。
そこから先の日本酒造りの作業場では、すでに仕込み時期(冬~春)が終わっていたため、実際の酒造りは見られませんでしたが、酒造りの工程を説明していただきながらの案内となりました。

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身長の倍以上の高さがある仕込みタンク

仕込みタンクでは、25日ほどかけて発酵させて「もろみ」の状態にします。タンク一つからは、カップ酒(180ml)を毎日晩酌するとして180年くらいかかる量の日本酒が造られるのだとか。
発酵が終わったら、もろみを搾って日本酒と酒粕に分けるため、圧搾機で搾ったり、もろみを入れた袋を吊り下げて抽出するほか、こちらでは遠心分離機を使って分離させてこすことで、味にふくらみのある酒も造っています。

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超音波熟成酒と音楽酒が貯蔵されている氷温貯蔵地下蔵

続いて氷温貯蔵地下蔵へ。中はひんやり。
手前は「超音波熟成酒」の貯蔵室。北前船に載せた酒は波に揺られて美味しくなるという言い伝えをもとに誕生した超音波熟成酒は、適度な超音波振動を与えることでアルコール分子を包む水分子が分散され、まろやかで二日酔いになりにくい酒に生まれ変わることが科学的にも証明されています。

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超音波振動で熟成中

奥の貯蔵室はさらに温度が下がり、設定温度はゼロ度。大音量の音楽が流れるここには「音楽酒」が貯蔵されています。音楽を1年半~2年ほど流し続けることで、超音波熟成酒と同じ効果があるのだとか。ちなみに、流れていた音楽は、シンセサイザー奏者&作曲家として有名な喜多郎さんの曲に、日本海の波の音をミックスさせたものとのことでした。

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様々な種類の試飲酒が並ぶ試飲カウンターは透明シートにより感染予防にも配慮

酒蔵見学後には試飲ができます。
試飲酒は、そのときどきで様々な種類が用意されますが、同じもろみから遠心分離機でこしたものと、通常の圧搾機でこしたものを飲み比べてみると、確かに前者はまろやかで、後者はやや荒々しい味。こし方の違いだけでこんなにも味が異なるとは驚きです。
女性に人気の日本酒ベースの甘い梅酒や、アルコールが苦手な人やドライバーでも飲める甘酒も用意されていました。
もちろん、お気に入りの一本が見つかったら店内で購入できます。ここでしか手に入らない蔵元限定販売のレアな酒もありました。

こうして蔵元の酒造りに対する思いやこだわりを楽しく学ぶことができましたが、同時についつい買いすぎてしまう、ホスピタリティー溢れる北雪酒造の酒蔵見学と試飲でした。

個性あふれる佐渡の蔵元を巡る

佐渡では、他の蔵元でも酒蔵見学や試飲が行われています。

「尾畑酒造」(国中地区)

フルーティな香り、淡麗で軽快な味わいが特徴の銘柄「真野鶴」の蔵元。真野鶴は、国内外の数々の鑑評会で金メダルを受賞しています。
予約不要の酒蔵見学では、酒造りの工程を映像で見られるほか、日本酒サーバーによる試飲もできます。

「逸見酒造」(国中地区)

明治維新期に創業した佐渡で一番小さな蔵元。目の届く仕込み量で、酒の色を抜く活性炭によるろ過を極力抑え、出来上がりそのままの “素顔”の味わいを身上としています。敷地内の地下から湧き出る水が銘酒「真稜」を支えるほか、V6の井ノ原さんが爽やかな飲み口を絶賛して話題になった「至」の蔵元でもあります。
酒蔵見学は要予約で、試飲も行っています。

「天領盃酒造」(両津地区)

全国最年少28歳の蔵元社長が「機械と人間の分業」をはかり、水・米・微生物、三位一体が生み出す基本に忠実な酒を手掛けています。佐渡最高峰「金北山」の天然水を使用した銘柄「天領盆」は、香り高く、すっきりとした味わい。美容効果が高く女性に人気の甘酒の製造も行っています。
酒蔵見学は要予約で、蔵人の感性と最新技術が融合した工場をガイド付で見学できるほか、試飲も可能です。

「加藤酒造」(相川地区)

島内消費7割、佐渡の人々に愛される銘柄「金鶴」を造っています。少量生産で酒質はキレとコクのバランスがとれ、飲み飽きません。米から手掛ける酒造りを基本にして減肥栽培米など、環境に配慮した米造りなどに取り組んでいます。
酒蔵見学は行っていませんが、試飲ができるほか、売店もあります。

 

能楽とともに発展してきた佐渡の美酒、かつて佐渡に能楽を根付かせた世阿弥も大久保長安も口にしたであろう美酒を味わいに、ぜひ佐渡を訪れてみましょう。

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