佐渡は、2013年に日本ジオパークに認定されました。ジオパークとは、ジオ(地球・大地)とパーク(公園)を合わせた言葉で、ダイナミックな地球の活動がわかる地質や景観が大切に守られ、教育や持続可能な開発に活用されている地域のこと。世界ジオパークはユネスコのプログラムになっています。
佐渡ジオパークのテーマは「トキが舞う金銀の島 3億年の旅とひとの暮らし」。佐渡に残る風光明媚な景色の中には、3億年前にまだ海の底にあったときの古い岩石、3000万年前から起きた火山活動による金や銀の地下鉱脈の出現、300万年前よりはじまった隆起の痕跡など、島が作られた過程を見ることができます。そして、長い時間をかけて形成された地形や地質を、佐渡の人々は生活や文化の創生に活用してきました。そんなジオパークの視点から、佐渡の景勝地をご案内しましょう。
一枚岩の巨石は迫力満点~大野亀(両津地区)
緑に覆われた小高い丘に見えますが、横から見ると丘そのものは真っ黒な岩であることが分かります。大野亀は、大昔の火山活動により地下から上昇したマグマが冷えてできた亀型の巨石で、標高167mの一枚岩が海に突き出している姿は迫力があります。
約100万本ものトビシマカンゾウが咲き乱れる群生地としても有名で、初夏の5月下旬~6月上旬には黄色い花で彩られます。6月の第2日曜日には「佐渡カンゾウ祭り」が行われ、青い海と一面の黄色い花を背景に、鬼太鼓や佐渡民謡などが披露されます。
縄文時代に誕生した県最大の湖~加茂湖(両津地区)
周囲約17キロメートルにおよぶ加茂湖は、新潟県最大の湖。5000年前頃(縄文時代)、流水により砂が堆積して海と隔てられ、湖が誕生しました。もとは淡水でしたが、明治37年に湖水の氾濫を防ぐために海とつなげられ、淡水と海水が混じる汽水湖となりました。
湖岸は遊歩道やサイクリングロードが整備され、美しい景観を楽しむことができます。
また、カキの養殖が盛んで、湖面には約600台の養殖いかだが浮かんでいます。
30メートル級の断崖が連なる景勝地~尖閣湾(相川地区)
尖閣湾は、切り立った断崖が連なる景勝地。崖の高さは20~30メートルほどあり、大昔の火山活動で海の底から持ち上がり、長い年月をかけて荒波の浸食作用で削られて、現在のような切り立った地形になりました。崖には溶岩が流れた跡が見えます。
一帯は海中公園になっており、「尖閣湾揚島遊園」の展望台から全景が一望できるほか、「海中透視船(グラスボート)」で湾内巡りと海中の様子も楽しめます。
昭和に大ヒットした映画、元祖『君の名は』のロケ地としても知られています。
合格祈願&撮影スポットとしても人気~弁慶のはさみ岩(相川地区)
弁慶のはさみ岩は、下相川の吹上海岸にある奇観。断崖絶壁の巨岩と巨岩の間に、くさび型の岩がすっぽりと挟まっています。なぜ、このような光景が生まれたのかは解明させていませんが、その昔、「佐渡弁慶」と呼ばれた島一番の力自慢が鬼に力比べを挑まれ、投げ飛ばした岩が下相川の浜まで飛んできて岩壁に挟まったと伝えられています。
岩壁にぴったり挟まれたまま“落ちない”奇跡の岩にあやかりたいと受験生などが多く訪れるほか、岩の間から海や夕日を望む撮影スポットとしても知られています。
世界遺産登録を目指す~佐渡金山(相川地区)
佐渡には14の金銀鉱床があります。これらの鉱床は、島で火山活動が活発だった2000万年ほど前にマグマと地下水や海水が接触して熱水となり、その熱水が岩石と反応し、溶かし出された金・銀などが地上付近に集まってできたと考えられています。
豊かな鉱床に恵まれた佐渡金山の周辺には、その歴史を物語る遺跡・建物・文化などが数多く保存されており、これらの遺跡を世界遺産に登録する取り組みが進められています。
「史跡 佐渡金山」は、佐渡金山400年の歴史を伝える史跡です。
江戸時代の手掘り坑道跡を巡るコースなど各種の見学コースがあり、明治時代からの坑道・トロッコ・機械類を見学できるコースでは、江戸時代初期に人の手で掘り進めた露天掘り跡の「道遊の割戸(どうゆうのわりと)」を間近に見ることができます。これは、山頂から金脈を掘り進むうちに山がV字に割れたような姿になったもので、壮大な採掘跡を残す佐渡金山の象徴となっています。
金山近くの北沢地区には発電所やシックナー(水と不純物等を分離する装置)など鉱山の近代化に貢献した施設群が密集しています。「北沢浮遊選鉱場」は、明治初期に最新鋭だった「浮遊選鉱法」を導入した施設で、1カ月で5万トン以上の鉱石を処理できることから「東洋最大級の選鉱場」と言われました。
かつて海中にあったことを示す網目模様が特徴~潜岩(くぐりいわ)(南佐渡地区)
一見すると黒い岩ですが、近くで見ると表面には白い鉱物が網目模様を作っており、キリンの縞模様のように見えることから「キリン岩」とも呼ばれています。
網目模様は、大昔の海底火山の活動により海底に流れ出た溶岩が冷えて固まり、さらにその上に溶岩が積み重なることを繰返してできたもので、枕を積み重ねたような溶岩の流動痕から「枕状溶岩」と言います。かつて海の中だったことを示す証拠です。
亀の親子が寄り添うように見える奇岩~赤亀岩(前浜地区)
赤亀岩は、難破した漁師を大きな亀が助け、その亀が岩となったという言い伝えが残る奇岩で、赤亀明神を祭る祠があります。中央部に波で浸食されてできた空洞があり、亀の親子が寄り添っているようにも見えます。黄鉄鉱を含む白い岩石をベースに、所々が鉄石英で茶色になっていることから赤亀と名づけられました。
透明度が高い岩場の海岸には貝類やヤドカリなどが多く生息しており、磯遊びを楽しむこともできます。
佐渡には、上記にご紹介したほかにも、たくさんの景勝地があります。
佐渡の景勝地をジオガイドと一緒に歩くことで、佐渡ジオパークの見どころから地球のことまで楽しく知ることができるプログラム「ジオガイドと歩こう!」も用意されています。
太古の昔からの島のなりたちに思いを馳せながら、佐渡に広がる大地の魅力や文化を堪能しましょう。