ロープウェイの吉野山駅から世界遺産の金峯山寺蔵王堂を経て、さらに中千本エリアの竹林院あたりまでの約1.7kmにわたる上り坂の参道には、食事処、土産物店、旅館などが軒を連ねています。中でも目立つのが吉野本葛、柿の葉寿司などの文字が躍る看板。秋は紅葉を、春は桜を愛でながら、のんびり参道を歩きながら吉野の名物グルメを味わいましょう。

吉野本葛について学び、“賞味期限10分”のプルプル食感を味わう

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葛餅・葛切りを注文すると、店頭で作り方を見学できる中井春風堂

金峯山寺蔵王堂の前にあり、イートインで提供される葛餅や葛切りを注文すると店主自ら店頭で作り上げるパフォーマンスが人気の店が、吉野本葛専門店の中井春風堂です。

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店頭で解説つきの実演をする店主。コロナ対策のため、ビニールカーテン越しに見学する

そもそも葛は、現在の吉野町国栖(くず)が産地であったことにその名が由来することからも、吉野が葛の本場と言われ、古くから食用・薬用として利用されてきました。しかし、葛が何から、どのように作られるかは、それほど知られていません。

店頭でのパフォーマンスでは、そんな謎だらけの葛についても学ぶことができます。

葛とはどんな植物なのか、どの部分が葛粉となるのか、「吉野葛」と「吉野本葛」の違い、そして吉野本葛が高価な理由も、ここに行けばわかります。

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ツル状の植物が葛。楕円形の3枚の小葉が一組になっているのが特徴

この店の葛餅、葛切りは、吉野本葛の葛粉と水だけで作るシンプルなもの。よって、どちらもわずか数分の間に、まるでマジックを見ているかのようにあっという間に出来上がってしまいました。その驚きの作り方については、現地でお楽しみください。

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これが切る前の葛切り

なお、葛餅も葛切りも、透明感と瑞々しさは、葛粉の性質上10分ほどしか保たないのだそう。
「ですから、取り置きも、お土産にもできません。注文を受けてから一から作り、一番美味しいできたてを召し上がっていただきます」(店主)

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柔らかな口当たりの葛餅。吉野杉の箸でいただく

作り方の見学が終わったら、賞味期限10分ですから、急いで隣のカフェへ。
葛餅には、黒蜜ときなこが付いてきますが、まずは何もつけずに一口。柔らかな口当たりで、ほんのりとした上品な甘みが感じられました。

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のどごしがよい葛切り

葛切りには黒蜜が付きます。こちらは、葛餅よりも瑞々しく、ツルッとのどごしが良いのが魅力。何と言っても、吉野本葛について知識を得た後にいただく葛餅と葛切りの味は格別に感じられました。

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1階のカフェでは、四季折々の景色が美しい吉野山を眺めながら吉野本葛の葛菓子を味わうことができる

昭和の匂いがする食事処で葛うどんと柿の葉寿司を食す

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平らでつるつるとした食感のうどんに優しい出汁がマッチする葛うどん

せっかくだから、吉野の名物をあれこれ食べてみたい。そんな欲張りなニーズを満たしてくれるのが、金峯山寺蔵王堂の南側にあるお食事処はるかぜで、店の名物である葛うどんのほか、柿の葉寿司の各種定食もいただけます。吉野葛を使った葛うどんは、麺とつゆの両方に葛が使われており、ツルッとのどごしが良いのが特徴です。
また、昔ながらの製法による柿の葉寿司が味わえる「柿の葉すしご膳」や「ミニ柿の葉すし定食」もあります。やや甘めのすし飯に、塩気の効いたサバが乗っており、どちらも胡麻豆腐や和え物、そうめんの吸い物、葛菓子などが付いています。店内からは吉野の山がよく見え、畳敷きのテーブル席もあるので、靴を脱いでゆったりとくつろぐことができます。

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どこか昭和の雰囲気が漂う店内。吉野の山々を眺めながらゆったり食事ができる

吉野散策に欠かせない食べ歩きグルメ、皇室に献上された草餅&美しいさくら羊羹

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名物の草餅をはじめ、桜餅や三色団子など昔ながらの素朴で優しい味わいの和菓子が揃う萬松堂

萬松堂は、金峯山寺仁王門の門前にある茶店として明治時代に創業、「仁王門の階段の下のお団子屋さん」として親しまれてきました。名物の草餅は、ヨモギがたっぷりつき込まれた餅と、自家製の甘さ控えめのこしあんを、主人が一つずつ包んだもので、昭和天皇にも献上されました。添加物を一切使っていない草餅の賞味期限は当日限り。1個から買えるので吉野散策をしながら食べ歩きもできます。

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プルンとした寒天に桜の花びらがふわりと咲き、下部はあっさりとした甘さの羊羹でできた2層仕立てのさくら羊羹

また、「吉野の春をいつでも目と味で楽しんでもらえるように」という思いで作られた、さくら羊羹も人気の一品です。塩漬けされた桜の花が閉じ込められた桜色の寒天の下は、淡い緑の羊羹で、吉野山を連想させるコントラストが鮮やか。味も羊羹の甘味と桜の花の塩気のバランスが絶妙です。こちらの賞味期限は常温で約5日、冷蔵庫にて1カ月。土産として持ち帰ることもできます。また、冷やすと、なおいっそう美味しくいただくことができます。

一つ一つ丁寧に手作りされた柿の葉寿司を土産に持ち帰る

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木型の枠にすし飯を入れて一つずつ手押しをする昔ながらの製法で作られた柿の葉寿司

柿の葉寿司は古くから吉野に伝わる伝統食で、江戸時代、熊野灘(現在の和歌山県)の漁師が新鮮な鯖を塩漬けにして山を越えて吉野に売りに来たことに端を発していると言われています。海の幸が手に入らない吉野では、夏祭りのご馳走として、たいそう喜ばれました。

柿の葉寿司たつみは、昭和55年の創業以来、昔ながらの製法で一つ一つ手作りしている柿の葉寿司の持ち帰り専門店。
鯖と鮭の2種類があり、西吉野産の柿の葉を使用し、あっさり目のシャリで鯖や鮭の旨味と柿の葉の香りを活かしているのが特徴です。

冬場は塩漬けにした柿の葉が使用されますが、夏場は生の柿の葉で、とくに5月下旬の若葉の頃は香りが良いそう。また、11月中旬の色鮮やかに紅葉した柿の葉で包まれた秋季限定の「紅葉の柿の葉すし」も人気が高く、季節ごとの柿の葉の風情が楽しめるのも魅力です。

鯖の味のうまさが引き立つということで作りたてを好む人もいるそうですが、店主のアドバイス通り、翌日に食したところ、すし飯に魚の塩分が馴染み、まろやかな味わいを楽しむことができました。

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店内で食事をすることはできないが、持ち帰りのほか、ネット購入もできる

吉野の名物グルメはお腹と相談しながら吟味しましょう

吉野の名物グルメには、山里ならではの素朴な味わいが多く、葛餅や葛切り、草餅のように、作りたてがいちばん美味しいというものもあります。自分のお腹と相談しながら、その場で味わうか、食べ歩きをするか、または土産として持ち帰るかなど、計画的に効率的に吉野の名物グルメを堪能する必要があることを実感した旅でした。

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