吉野の四季を彩る年中行事

吉野の年中行事には、他の地域では見られないユニークなものが多く、いずれも世界遺産の金峯山寺蔵王堂を中心に、吉野山全山を挙げて取り組まれており、多くの観光客が集まります。
そんな吉野の四季を彩る代表的な年中行事を春夏秋冬ごとにご紹介しましょう。

【春】金峯山寺の本尊に山桜の満開を報告する春のメインイベント「花供会式」

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奴行列を先頭に、蔵王堂まで練り歩く大名行列
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大名行列には、山伏装束を身につけた「お稚児さん」と呼ばれる子どもたちも参加

花供会式(はなくえしき)は、正式には花供懺法会(はなくせんぼうえ)といい、毎年吉野山の桜が満開となる4月10~12日にかけて、金峯山寺御本尊の蔵王権現に山桜の満開を報告する伝統行事です。山桜は、蔵王権現の神木として、古くから吉野山に植えられ、保護されてきたもので、春の吉野山のメインイベントともいえる行事です。

初日の10日は、金峯山寺境内で、臼に入れた米を伊勢音頭に合わせて大勢の人々が細長い杵で搗き上げて餅にする花供千本搗き(はなくせんぼんづき)から始まります。これは、その昔、金峯山の高僧が毎年諸国より寄進された米を餅に搗き上げて蔵王権現にお供えし、近隣の人々に分け与えたことを今に伝えるものです。

その後、女性の行者が中心となって護摩を焚く女人採灯大護摩供(にょにんさいとうだいごまく)が行われます。女性による採灯大護摩供は金峯山寺だけと言われている全国でも珍しい独特の法会です。

11日、12日は両日とも、奴行列を先頭に、金峯山寺の鬼、稚児、山伏、僧侶などが行列を整えて竹林院から蔵王堂まで練り歩く大名行列や採灯大護摩供が行われ、最後に千本搗きで搗かれた餅がまかれる御供撒き(ごくまき)によって行事は終わります。

【夏】蛙の姿にされた男が人間に戻るユニークな儀礼「蓮華会・蛙飛び行事」

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金峯山寺へと向かう蛙を乗せた太鼓台
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導師の前に進み出た蛙は自らの不徳を謝罪。その後、蛙の被り物が取り去られ人間に戻ったところで参拝客から拍手が起きる

蓮華会(れんげえ)は、金峯山寺の三大行事の一つ、蓮の花を蔵王権現に供える法会で、蛙飛び行事はその一部として毎年7月7日に行われます。

平安時代から続くとされる伝統行事で、山伏を侮辱したことで、僧侶によって蛙の姿に変えられた男が、その後、修行を積んで人間に戻してもらったという言い伝えを由来とするユニークなものです。

7月7日の朝、修験道の開祖である役行者が産湯を使ったとされる大和高田市の弁天池で蓮の花を摘むことから行事は始まります。途中、蛙に扮した男を乗せた太鼓台(神輿)が合流し、金峯山寺までにぎやかに練り歩きます。

金峯山寺蔵王堂前に到着すると、いよいよ「蛙飛び」の儀式です。蛙が導師の前に飛び進み、ひざまずきながら懺悔をし、最後に導師が経を唱えると、めでたく人間の姿に戻ります。

ユーモア溢れる蛙の動きが見どころで、毎年多くの観光客が訪れる人気行事となっています。

【秋】重量感たっぷりのふとん太鼓が練り歩く「吉野山秋祭り」

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ふとん太鼓は途中何度も激しく揺らされる

吉野山秋祭りは毎年10月第3日曜に行われる、吉野山にある神社が五穀豊穣を感謝する神嘗祭(かんなめさい)です。

ふとん太鼓と呼ばれる1トンもの太鼓台(神輿)を、上町の「ろ組」は竹林院、中町の「三丁組」は勝手神社、下町の「の組」は銅鳥居からそれぞれ担いで出発し、活気ある囃子や掛け声とともに町中を練り歩きます。重量感たっぷりのふとん太鼓を担ぎ手たちが肩に乗せ、坂道や狭い道が多い吉野山を練り歩く光景は圧巻。

金峯山寺に集結した三基の太鼓台が急な石段を駆け上がるのが一番の見どころで、「浮かせよ!」の掛け声とともにふとん太鼓が激しく揺らされます。祭礼の締めには、お供え物の餅まきが行われ、地元の人や観光客でたいへんな賑わいとなります。

【冬】「福は内、鬼も内」 と唱える金峯山寺独特の節分会「鬼の祭典」に合わせて開催される「鬼フェス」

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鬼火の祭典の最後、法力のこもった豆まきによって「良い鬼」に改心して平伏する鬼たち
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改心した鬼たちが喜んで大護摩の火の周りで踊る鬼踊り

金峯山寺の節分会・鬼火の祭典は、修験道の開祖である役行者が法力で「鬼」を呪縛し、仏法を説いて弟子にしたという故事に習い、千年以上続いている伝統行事です。

毎年2月3日(年により変動することもあり)に金峯山寺蔵王堂で行われる鬼の調伏式とも言われる全国でも極めて珍しい節分会は、「福は内、鬼も内」と唱え、全国から追われてきた鬼を迎え入れます。 そして、経典の功徳や法力、また信徒たちがまく豆によって、荒れ狂う鬼たちを平伏させ「良い鬼」に改心させます。その後、改心した鬼たちは、境内の大護摩の火の周りで喜びの鬼踊りを踊ります。

また、鬼火の祭典に合わせて、毎年、吉野一帯で開催されるのが「鬼フェスin吉野山」です。期間中には、鬼が夜の吉野山を練り歩く「鬼歩き」や、宿泊先の旅館に鬼が出没する「鬼さんこちら」、奈良県内寺社の鬼たちが金峯山寺蔵王堂に集結する「鬼の夜会」など鬼と触れ合える多彩なイベントが盛りだくさん! そのほか、吉野の寺社で鬼フェス期間限定の御朱印がもらえる「吉野山御朱印巡り」など町全体が鬼ムード一色に染まります。

全国でも極めて珍しい奇祭が多い吉野の年中行事

吉野には、上記のほかにも多くの年中行事があり、無病息災や五穀豊穣を願って行われます。残念ながら、この2年間は新型コロナウイルス対策のため中止・縮小となった行事もあり、早く平常通り開催されることを願っております。

全国でも極めて珍しい奇祭が多い奈良・吉野、行事の日程に合わせて旅を計画されると、より思い出深い旅になることでしょう。

 

写真提供:一般財団法人 奈良県ビジターズビューロー、吉野山観光協会

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