吉野の中でも、吉野川と高見川との合流地点付近の川を望む集落は「国栖の里」と言われ、古くから吉野和紙の産地として知られてきました。近年では木工や陶芸なども加わり、自然の恵みを生かした「ものづくりの里」とも呼ばれています。
国栖の里では、紙漉き、箸作り、陶芸など、伝統工芸の体験をすることができます。これらの体験を通して、ものづくりの魅力に触れてみましょう。

6代続く「植和紙工房」で紙漉きを体験!

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歴史を感じさせる植和紙工房

吉野和紙は、壬申の乱で後に天皇となる大海人皇子がこの地を訪れ、紙作りを伝えたという説があり、1300年の歴史を誇ります。文献で遡ることができるのは室町時代までですが、それでも600年以上の伝統があることになります。
丈夫で温かみあふれる吉野和紙の紙漉きを体験できるのは「植(うえ)和紙工房」。6代続く工房で、掛け軸に使用される「宇陀紙」などの和紙を手掛けています。

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6代目の植浩三さん。吉野和紙を多くの方に知ってもらいたいと、小学校での出張体験なども行っている

紙漉き体験は約20分ですが、乾燥の工程まで入れると約1時間ほど。6代目の植浩三さんにコツを教えてもらいながらの体験となるので、初心者でも安心して挑戦できます。体験ではA4サイズの1枚か、はがきサイズの6枚どちらかを選んで作ることができます(どちらも1人1200円、要予約)。今回は、A4サイズの金粉・銀粉入りの和紙作りにチャレンジしました!

植和紙工房の和紙作りは、原料のコウゾという木を1年かけて育て、皮をはぐところから始まります。表皮をはいで、内側の白い部分のみを使用します。もちろん、体験では、そうした工程は省かれますが、こうして用意していただいた材料にこそ、多くの時間と手間が費やされていたことを知り、まずはビックリ!

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吉野和紙の原料と、紙漉きに用いる簀桁(すけた)と呼ばれる木枠。小さい容器に入っているのがコウゾ、ヒノキの皮、パルプ。左の容器の中身は金粉と銀粉。右の中身は糊空木(ノリウツギ)からとれる天然糊

コウゾに、ヒノキの皮、パルプ(吉野杉の使わない部分をパルプにしたもの)を混ぜたものが原料となります。この原料を水と一緒に漉き舟(すきぶね)に入れ、さらに追加投入するのが「糊空木(ノリウツギ)」という木から搾った天然糊。糊空木を入れることで、液にとろみがつき、紙漉きをするときに厚さが均一になりやすくなるのです。

こうして、原料液が出来上がったところで、いよいよ紙漉き体験です。

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植さんのアドバイスのもと、原料液を手前に向かってすくい、前後に揺らす。これを繰り返す

簀桁(すけた)と呼ばれる木枠を両手で持ち、原料液をすくい、前後に揺らしてまんべんなく広げていきます。これが案外と難しい! 簀桁の枠内に原料液の量が均一になるように動かさなければなりません。ちなみに、ゆっくり動かして漉くと凸凹のある和紙になりやすいとのこと。「まあ、それはそれで味のある出来上がりになるから大丈夫です」と励ましてくれる植さん。

こうして、なんとか漉き終えたところに、金粉と銀粉を加えます。

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金粉と銀粉を加えると、紙がキラキラ輝く仕上げになる

さて、ここからの乾燥の工程は、植さんが担当してくださいます。簀桁から取り外し、水分を絞ります。圧縮機を使用することもあるそうですが、今回は手作業で丁寧に水分を抜いていきます。

最後に、乾燥機で乾かして完成となりました。

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ローラーで丹念に水分を抜く
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内側の蒸気で温めた乾燥機で乾かす

こうして完成した吉野和紙は、ところどころコウゾの茶色い繊維が見えるのも、さらに多少凸凹しているのも味わい深い出来上がりとなりました。持ち帰ったら、大切に飾ろうか、それとも筆をしたためて大切な人へ送ろうか………、旅のあとの楽しみも増えました。

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自分が作った和紙は愛着が湧いてくる

国栖の里で体験できる伝統工芸のいろいろ

国栖の里では、他の工房でも伝統工芸体験が行われています。

吉野手漉き和紙体験「福西和紙本舗

体験用の小さな木枠を使い、ハガキ8枚か証書サイズ1枚を漉きます。花や葉などのモチーフを入れたり、草木染めの染料などを使って、自分だけのオリジナルデザインの和紙を作ることができます。
※約1時間、1人2000円、10名以上で要予約

マイ箸作り体験「辰田製作所

吉野の高級建築素材の桧で作られたまだ面取りをしていない状態の箸をサンドペーパーで磨きます。最後に、電熱ペンで名前やイラストなどを焼き付けて、世界で1つだけのオリジナルのマイ箸を作ります。
※約1時間、1人500円、10名以上で要予約

陶芸体験「国栖窯(くずよう)

オリジナルの陶器皿やカップを、底の作り方や粘土の紐の積み方などを教えてもらいながら作ります。土に親しみながら自分らしい形を作り、焼き上がりの色を選びます。乾燥・窯焼きを経て、出来上がった作品は配送してもらえます。
※要予約

伝統工芸体験は“持ち帰ることのできる思い出”

伝統工芸体験は、体験して作ったものをお土産として持ち帰る楽しみもあります。旅から戻り、自分で作った愛着溢れるオリジナルの作品を眺めるごとに、吉野への旅を追体験できるに違いありません。国栖の里の忘れられない思い出を“形”に残しましょう。

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