琉球芸能と能楽との深い結びつき

公益社団法人 能楽協会

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九州/沖縄 公演の魅力

世界遺産を会場とする能楽特別公演。沖縄では、琉球王国時代の城跡・中城城跡で11月1日(水)と2日(木)の夜に開催されます。公演の魅力をお伝えする本記事では、琉球芸能と能楽との深い結びつきについてご紹介します。

琉球芸能に垣間見える能楽の痕跡

昨年の沖縄特別公演で能楽と同舞台で演じられた琉球舞踊

芸能の宝庫と呼ばれる沖縄には、獅子舞や民謡などの民俗芸能が数多くありますが、琉球王国時代に中国からの使者をもてなす歌や踊りとして発展した組踊(くみおどり)」や「琉球舞踊」などの宮廷芸能があります。それらを総称して「御冠船踊(おかんせんおどり)」といいます。宮廷芸能には、実は能楽の影響を垣間見ることができます。

宮廷芸能のはじまり

15世紀、中国からの使者が琉球国王の代替わり時に派遣されるようになると、琉球王府は使者を歓迎するための音楽や舞踊を担当する踊奉行(おどりぶぎょう)という役職を設置し、士族らを組織して御冠船踊として上演しました。
御冠船踊の名は、使者が新しい琉球国王に授ける王冠を携えてきたことから、使者の船を御冠船と呼んだことに起因しています。

江戸時代になり、琉球が薩摩藩の支配を受けるようになると、琉球においても士族のたしなみとして能楽(謡曲)が愛好されるようになりました。
琉球王府は、徳川将軍と琉球国王が代替りするたびに、江戸幕府に使節団を派遣しました。これを「江戸上り(えどのぼり)」と言います。なお、琉球王国の公式文書では「江戸上り」ではなく「江戸立(えどだち)」が使われていました。使節団は薩摩藩と共に江戸まで行き、江戸城や薩摩藩江戸屋敷で音楽や舞踊を披露したのです。
江戸上りは半年から1年滞在することになりました。一行は、当時京都・大阪・江戸で流行していた能楽や歌舞伎などの芸能から多くを学びました。

組踊の創始者であり、琉球王府の踊奉行であった玉城朝薫(たまぐすくちょうくん)もその一人でした。朝薫は薩摩・江戸を計7回も往来し、見聞した能楽などの芸能を参考にして、琉球の歴史や故事、説話などを取り入れた歌舞劇「組踊」を創り出しました。組踊は首里城で上演し、中国からの使者をもてなしたそうです。

能の影響が色濃く反映された組踊の曲

朝薫が創作した「二童敵討(にどうてきうち)」「執心鐘入(しゅうしんかねいり)」「銘苅子(めかるし)」「孝行の巻(こうこうのまき)」「女物狂(おんなものぐるい)」は「朝薫五番」とも言われ、完成度が高く、現在も上演される組踊の代表作となっています。
朝薫五番には、能の影響が色濃く反映されており、前記演目の順に、能「放下僧(ほうかそう)」「道成寺」「羽衣」「生贄(いけにえ)」「桜川」などの各物語を取り入れながら生み出したとされています。

ともにユネスコの世界遺産に指定された組踊と能楽

琉球王国時代に創作された組踊は約70曲。「忠」「孝」をテーマにした組踊は中国からの使者に好評を博し、使者歓待の宴は組踊を中心に演じられるようになりました。また、琉球王府解体後、組踊は町の芝居小屋へと移り、沖縄の諸島を含む地方にも伝わりました。

沖縄の古語のせりふ、琉球の音楽と踊りで、約300年も演じられてきた組踊は、能楽と同じように国指定重要無形文化財となり、ユネスコの世界遺産にも指定されました。

今回の公演では、かつて琉球王国時代に城があった場所で、琉球芸能に大きな影響を与えた能楽をお楽しみいただけます。公演1日目には琉球芸能も上演されますので、能楽との共通点など探してみてください。

組踊の歴史や現在について紹介している映像。国立劇場おきなわYouTube公式チャンネルより

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